早朝のテルミドール、ドックに着いた巨大空母オロチの体内に、次々とＡＦが搬入されていく。

　月にあるほぼ全てのＡＦに、地上やマルスから前日到着したのも合わせれば、軽く５００機は超えるだろう。もっともこれでもシャオダーと互角に戦うには厳しすぎるものがあるが。

　搬入作業と共に搭乗も終わり、オロチはその巨体を宇宙へと舞い上がらせる。

　旗艦『アマテラス』を始めアマテラス級宇宙戦艦『ガイア』、襲撃艦『イェーガ』、その他の突撃艦、護衛艦を合わせれば１５０の宇宙艦船が月軌道上に展開していた。

　オロチもすぐさまその戦列に加わる。かくして、最大規模の戦闘に向け、弓は放たれた。





　―レイジ、これから私は旧友とあってくるのだが。お主も一緒にどうだ？

　ムラクモから降りようとしたとき、武尊がレイジの傍にふわりと寄ってきた。

　―旧友？エレメンタルの知り合いでもいるのか？

　そうだ、と言って武尊は続ける。

　―今は、このオロチとやらのメインＯＳをしているらしいのだ。

　「そりゃ出世だな」

　レイジは興味なさげに適当に相槌を打った。

　―お主、先ほどから眠そうではないか？

　「ほっといてくれ・・・・・」

　生あくびをしながらレイジはムラクモから飛び降りる。ヒュンと武尊もそれに続いた。

　―今日が戦闘だと言うのに、大したものだな。

　呆れたように武尊が言う。だが、その言葉の端はしにはからかいの口調も混じっていた。

　「ハルカと一夜でも過ごしたかね？」

　ビシッとレイジの平手が武尊のごつい顔に炸裂する。本来ならすり抜けるはずだが、今回のレイジの掌には魔力が篭っていたようで、派手に武尊は吹き飛んでいった。

　ピクピクと床で痙攣する武尊。そんな武尊に振り返りもせず、レイジは言った。

　「・・・会いにいくんだろ？付き合ってやるよ」

　明らかに話題をすりかえるつもりだ、と武尊は思ったがこれ以上からかっては命に関わるかもしれない。まぁ、当初の目的は達成されたからよしとするか。

　「で、何処行くんだ？」

　―アタノール機関のあるところなんだが。

　「じゃ、機関室か」

　―うむ。

　「なぁ、武尊。俺を誘ったのって機関室の場所がわからないから、クルーに尋ねさせるためだろ？」
　それなりに図星だった。





　オロチの機関室は、船体の後方に陣取っていた。武尊の願いどおりレイジがクルーに場所を聞きやっと見つけたのだ。

　しかし、『関係者以外立ち入り禁止』らしきことが書かれロックされている。

　「そら、そうだ」

　うん、納得。と手を叩くレイジ。

　―まぁ、私ならすり抜けられるがな。

　ふふふ、と妙に誇らしげに武尊が言う。

　「・・・・・何か、武尊。お前は人を誘っておいていざとなったら切り捨てるのか？」

　ジロッとレイジは相方を睨んだ。ゾッとするほど冷たい眼差しだ。まずい、殺られるッ。

　―そ、そんなわけあるわけなかろう。わ、私が交渉して開けてもらう。

　慌ててその場を繕う武尊だったが、何か策があるわけでもない。

　絶体絶命、と武尊が思った瞬間だった。

　ピッとドアのロックが解除され何処からともなく、低い声が響いてきた。

　―入るならさっさと入れ・・・・。

　「？」

　―む、無明か？！

　―・・・・・・閉めるぞ。

　―ま、待て、焦るな。さぁ、レイジさっさと入るぞ。

　武尊に急かされるままレイジは機関室へと足を踏み入れた。

　かすかに外よりは温度が高かったが気にするほどでもない。大きな船体に似つかず、機関室は小さかった。

　その機関室の半分を巨大な炉が占めている。これこそが、エネルギーの源アタノール機関だ。

　アタノール機関、またの名を不死の炎を燃やし続ける永久機関。かつての錬金術全盛期に錬金術師たちが使っていた反射炉の名前に由来したものだ。

　精霊と不死の炎―アタノール―が融合することにより、アタノール機関は通常よりも大きな力を得ることが出来る。ＡＦも巨大な艦も厳密にはその原理に乗っ取って動いている。

　アタノールと融合すれば巨大な力をえることができ、なおかつＯＳとしても働いてくれる。

　精霊がＯＳとして用いられるのはこういった理由からだった。

　―久しいな、無明。

　―・・・・・・・・・・・あぁ。

　炉の前に大蛇の精霊が現れた。とぐろをまき、鎌首をもたげたその姿は見るものに畏怖の念すら与えるほど威圧感がある。とてもじゃないがごついだけの武尊とは釣り合いが取れない。

　「本当に、知り合いなのか？」

　―な、何を言う。マブダチだぞ、私と無明は。

　―・・・・・・・・・マブダチ。

　ボソッと無明が言った。

　「マジですか・・・・」

　ハハッと渇いた笑いがレイジの口から漏れた。

　―・・・・・・・・・。

　―無明は無口なのだ。

　それは言われないでも何となくわかる気がした。

　―・・・・・・・・、君はアマナギの息子だな。

　その無口な無明が口を開いた。先ほどよりも、感情がこもっているように感じられる。

　「リョウ＝アマナギなら俺の父です」

　―・・・・・やはり。・・・・・・・・・・感じが似ている。

　無明はシュルとレイジの目の前に顔を寄せて来た。

　―・・・・・・・・・・君の父リョウとは・・・・共にムラクモを駆った仲だ。

　１０年前が見えるかのように無明は言った。

　機体が壊れようと、搭乗者が死亡しようと余程のことが無い限り精霊は生き残ることができる。それを考えれば、あのムラクモに乗っていた精霊がこうしていることも不思議ではない。

　「そうですか・・・」

　―・・・リョウは立派な男で、・・・よき友人だった・・・・・・。彼を守れなかったのは・・・・・・・・・・私の責任だ。

　そう言って、無明は眼を閉じた。

　「いや・・・、そんなことないです。あなたも父も、死力をつくして月を守ろうとしたんだ。父が死んだのは誰のせいでもありません」

　―・・・・・・・・・・・・・・そう言ってもらえると救われる。

　１０年、無明は罪の意識に苛まれていた。あの時、リョウを救う手立てが本当になかったのだろうかと今でも思うときがある。だが、１０年の時を経てこうして出会った友人の息子は、私を許してくれた。いや、許したのは私だろうか。私が私の心を許したのだろうか。

　レイジはチラリと武尊の方を見やった。うむ、と頷く武尊が見える。成る程、俺とこのエレメンタルとを会わせたかったと言うわけか。

　―・・・・・・・武尊・・・・・・・・。私は・・・・・・友人を守ることができなかった。

　無明は顔を武尊に向けながら語りだした。

　―そんな私が・・・・・・・・こんなことを言うのは筋違いかもしれないが・・・・・。

　長い一呼吸を置いて無明の声が響く。

　―君は・・・・・・、彼を守るんだ・・・・・・・・・・・・・。

　その一言に武尊は苦笑した。

　―相変わらず無理を言う。

　―・・・・・・・・・・君は、・・・・そうは思っていないはずだ。

　武尊の胸のうちを見透かすように無明は言った。

　―まぁ、逆にこの私がレイジに助けられる方かもしれんがな。

　―・・・・・・そちらの可能性の方が・・・・・・・・・遥かに高いやもな。

　微かな笑いがその声には篭っているように感じられた。

　―非道いな、無明よ。

　武尊も笑っている。どうやら、このようなやり取りは今に始まったものではないらしい。

　と、突然、警戒音が辺りに鳴り響いた。続いてオペレータの声が聞こえる。

　『総員第一種戦闘配置、繰り返す総員第一種戦闘配置。パイロットはコックピット内にて待機せよ、繰り返すパイロットはコックピット内にて待機せよ』

　「早いな・・・」

　予定宙域にはまだ達していないはずだ。

　―予定は未定と言うであろう。連中、ルイディーンが近くなったから急ぎ足なんだろうさ。そういうことだから、無明。お主もせいぜい気張れよ。

　―・・・・・・・無論だ。

　レイジと武尊は無明に背を向け機関室を出ようとする。その背中に、無明は声をかけた。

　―・・・・君たちも・・・生きろよ・・・・・・・・・・・・・・。

　その声に二人は同時に振向き、一瞬ガッツポーズを決める。そしてそのまま通路の奥へと姿を消した。

　―・・・・・・・・。

　二つの影が消えるのを見届けると、無明はアタノールの機関に絡みついた。それは、さながら炉の守り神のようだった。





　―どうしたの、ハルカ？

　警報が鳴ってから、ハルカは何か考え込むようにその身を操縦席に預けている。喋りもしないし、その表情からは何も読み取れない。

　「ねぇ、伊吹・・・」

　そんなハルカが呟くように、口を開いた。

　―ん？

　「死ぬってさ、どんな感じかな」

　―何をいきなり。

　何事にもポジィティブ思考なハルカが、戦闘を前にそんなことを言うとはらしくない。

　思わず伊吹は困惑した。

　「ううん、変なこと聞いちゃってごめんね」

　―どうしたのよ、あなたらしくないわ。

　「緊張してるのかも」

　ハハッと髪を掻きながらハルカが言う。でもその顔は何処か無理をしているように見える。

　―何かあったの？

　「もしかしたら・・・・何かあるかもしれない」

　ポツンとハルカが呟く。その言葉の意味がわからない伊吹はますます困惑した。

　「気にしないで、なんでもないから」

　そんな様子が伝わったのだろうか。ハルカはすぐに心からの笑顔を見せた。

　―えぇ、わかったわ。

　その笑顔に、なんとなく伊吹は安心した。大丈夫、この子ならきっとやってくれる。

　その時、ピッと画面にラナの顔が浮かび上がった。

　『第七機動部隊へ通達。これより、我ら第七機動部隊はガイアの周囲に展開、迎撃に備えます。総員、出撃準備。さぁ、サクッといくわよッ』

　グッと親指を立てるラナ。これが彼女なりの部下たちへの手向けだ。

　「了解」

　同じようにハルカも、いや、どの隊員もラナと同じポーズをとった。

　ビーッとブザーが鳴り、オロチの持つ八つの射出口のうち、真ん中の第一射出口へとムラクモは動き始める。

　何機かのＡＦは既に星の海へと飛び立っていた。あと少しでハルカたちの番がやってくるだろう。

　「レイジ」

　自分たちのすぐ後ろに待機しているレイジのムラクモにハルカは回線をつないだ。

　『どした？』

　「気をつけてね」

　一言、それだけが言いたかった。

　『あぁ、ハルカも気をつけて』

　微笑んだレイジの顔が画面に映し出される。何故だろう、また、不安が襲ってきた。この表情、レイジには悟られたくないなぁ。

　「・・・・・・じゃ、行くから」

　慌てて通信回線を切る。目の前に居たＡＦ、ミライが射出口から飛び立ったところだった。

　カタパルトへとムラクモを誘導する。射出口のランプがオールグリーンを告げた。

　「ハルカ＝フワ、ムラクモ・・・・行きますッ」

　放たれた弓のようにムラクモはオロチの体内から星の海へと飛び立った。





　何隻もの宇宙艦船から魔導砲が発射される。その閃光はシャオダー達を文字通り消し飛ばし、連中の戦列に大穴が開いたように見えた。

　しかし、目の前を覆いつくさんばかりのシャオダー達の群れはたちどころにその穴を埋め尽くす。

　魔導砲のチャージ時間は２０年前に比べれば大幅に短縮された。しかし大出力、高威力のこの切り札はそう何発も連続で撃つことができない。

　それでも小型の集束魔導砲、宇宙用高機動ＡＦや対シャオダー用戦闘機など２０年前には成しえなかった攻撃のバリエーションがある。長年の連中との戦闘の中で、人類が生み出し、鍛え上げてきた刃の数々だ。

　圧倒的物量を誇るシャオダーに対し、人類は質で応戦するしかない。だが、近年では連中もそれに対応するかのような化け物を次々と送ってくる。まるで殺虫剤に耐性をもつようになる虫のように。

　それでも、負けるわけにはいかなかった。負けること、それはすなわちルイディーンの滅亡と同義なのだ。



　魔導砲で仕留められなかったシャオダーたちが、怒り狂ったかのように目の色を朱に染め襲い掛かってくる。

　ガイア周辺に展開している第七機動部隊。歴戦を勝ち抜いてきた勇士たちに、いまだ未知数の力を秘めたルーキー、それをまとめるのは泣く子も更に泣くリーダー。完璧なまでの立ち回りを見せるこの部隊はまさに連合の刃の象徴ともいえる存在だろう。しかし、それでも戦況は五分五分といったところだろうか。

　レイジの目の前に蟲型のシャオダーが飛び出てきた。大きく開けられた顎の中へ、手持ちの集束魔導砲をお見舞いしてやる。

　ギャッと言う悲鳴が聞こえるかは知らないが、魔導の閃光はそれの体を易々と貫いた。

　―後ろからくるぞ！

　武尊のサポートのもとレイジのムラクモは振向きざまに、左手に握られた光刃を振り下ろす。

　パックリと真っ二つにされたのは様々な生き物が混じったようなキメラ型のシャオダーだった。

　息つくまもなく、ヘルメスの翼をはためかせたレイジのもとに鎌のようなものが振り下ろされる。しかし、その鎌はムラクモを捕らえることなく空を切り裂いた。

　あてが外れたように周囲を見渡す蟲型のシャオダー。その横っ腹に光刃が突き刺さる。

　「いけるッ」

　高速移動によって攻撃をかわし、一瞬にして敵の視界から消え、強襲。ヘルメスを搭載したムラクモならではの戦法だ。

　他のＡＦたちもそれぞれの戦い方を展開していた。カグチの長距離重火力砲撃、ラナのフェンリルに導かれたミライたちによる編成攻撃など各々の特性を生かした攻撃でシャオダーを撃破していく。

　優勢、そして劣勢。こちらがシャオダーを撃てば、連中もこちらを撃破してくる。圧倒的物量差はいかんしがたいものがあった。

　だからこそ、一騎当千の機体が必要なのだ。そのために作られたムラクモは、はたして期待通りの性能を発揮している。

　星の海を駆けるその機動力はものの数十分で月軌道まで行くことすら可能だろう。もっともそんなことをしたら中の人間はたまったものではないが。



　いい感じだ、そんな高揚感のようなものがレイジの中に芽生え始めていた。何もかもが遅く感じられる。シャオダーの攻撃などかすることすらない。訓練とは違うギリギリの生死の駆け引きも、今のレイジにとってはひどくつまらないもののように思えるほどだ。

　前方に数体のシャオダーが待ち構えている。集束魔導砲を撃ちながら、光刃を薙ぐように斬りつける。

　―まずい、レイジ！

　しかし、斬りつけた瞬間、四方八方からビームのようなものがムラクモに向かって放たれた。ムラクモのレーダーに入らないほどの長距離からの砲撃だ。連中を斬りつけたときに生じる一瞬の動きの鈍りでさえ、ムラクモを捉えるには十分だった。どうやらシャオダーたちもこのムラクモを最重要の敵と認識したらしい。

　「避ける！」

　イメージではギリギリでかわせた。球体に力を込め、レイジはムラクモを操る。よし、

　ここだっ。

　―レイジ！

　だが、しかし、またガクンと力が抜けてきた。訓練のときと同じ、突然挙動がおかしくなる。まるで濁流の中にいきなり堰を作ったかのようだ。

　「なっ！」

　心の底からマズイと思った。避けきれない。ムラクモの力なら避けられたはずだったのに。

　『レイジはもっと力があるんだよ』

　ふと、頭の中にそんな言葉が浮かんだ。悪ぃ、やっぱり俺、約束守れないみたいだ。

　「ごめんな・・・・・」

　呟き、閃光がムラクモを襲った。瞬間、何かに突き飛ばされたかのようにレイジのムラクモは明後日の方向へと吹き飛んでいく。

　「ハルカ！？」

　吹き飛ばされながら、レイジは確かに見た。ヘルメスを輝かせ、信じられないほどの高速で自分を突き飛ばしたハルカのムラクモを。

　だが、一瞬が二つの機体の命運を分けた。

　突き飛ばされたレイジの機体は難を逃れたものの、刹那の無慈悲がハルカの機体に襲い掛かったのだ。

　ある程度のシールドならどの機体にも施されている。しかし、四方八方からの一斉砲撃に耐えられるほど頑丈なシールドではない。

　必然的にハルカの機体は砲撃の餌食となった。足が撃ちぬかれ、手が撃ちぬかれ、腕が撃ちぬかれ、顔が撃ちぬかれ、腰をかすり、操縦席のすぐ下に大穴があく。瞬間、爆発が機体を襲った。

　爆発する直前、通レイジのもとへと通信がつながれる。通信の主はハルカだった。

　「レイジ・・・わた・・・・・・・」

　ハルカが何かを言いかけた瞬間、機体は爆発を起こした。

　「ハルカッ！！！」

　爆発は、しばらく続いた。特にヘルメス機構を搭載した部位は激しく爆発を繰り返している。
　「嘘だろ、ハルカッ。返事をしろ。おい！」

　ザーッと白黒の砂漠を映し出す画面にレイジは必死で叫びかけた。

　―レイジ、そんなことをしている場合ではないぞッ。

　武尊の叫びも、今のレイジには聞こえなかった。激しい自責の念が次々と襲い掛かってくる。しかし、それすらも今のレイジにはまとめられない。

　―レイジ、避けろ！

　ターゲットを捉えなおしたシャオダーたちの砲撃が再びレイジの機体を襲ってくる。停止しているムラクモはまさに絶好の獲物だった。
　―避けるんだ！

　我に返ったときにはもう遅い。

　「ちぃッ」

　避けられなかった。撃たれる。

　レイジのムラクモに四方八方からの砲撃が襲った。大爆発とともに眩しいほどの閃光が辺りを包む。

　「レイジッ！」

　アマテラスのブリッジ、司令レオ＝ゲインのすぐ隣でナハトは叫んだ。

　レイジをかばうかのように砲撃の餌食となったハルカのムラクモ。そして、今まさにその砲撃を逃れたレイジの機体までもが沈もうとしている。

　大爆発がおこり、アマテラスのブリッジにまで眩い光が襲ってくる。

「・・・・・？！」

　おかしいとナハトは思った。先ほどのハルカの機体の爆発でさえ、こんな閃光を放ってはいない。と、すればこれは何か別のものか？

　光がやむ。

　その中に、ナハトたちは紅い繭のようなものをみた。紅い、まさに真紅の輝きを放つ繭は爆発の中心でしかしはっきりと存在している。

　「なんじゃ・・・あれは」

　誰もが呆然とその光景を見るしかなかった。

　「通信回線を、アマナギ機に繋ぐんだ」

　一人、冷静にレオはオペレータに指示を出す。我に帰ったオペレータは通信回線をレイジの機体に繋いだ。しかし、いくらやっても反応がない。

　「反応ありません」

　「なら状況はッ」

　「認識不能。すべて我々の範疇を超えています」

　ギリッとレオの口から歯軋りが漏れた

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