・・・・・。
・・・・・。
「そこまでだ・・・・」
キリエル達が戦っている最中、誰かの声が戦闘を止めた。
橋の上に立っていた者は・・・・・
「・・・・フィリア・・・・さん」
そう、フィリアだ。
「・・・・とてもいい夜だ。この夜は我に幸を与えてくれたのだろうか・・・。歯ごたえのありそうな人間と魔物がおるわ・・・」
ＲＯ ｔｈｅ ｓｔｏｒｙ ｔｉｍｅ
『Good-By・・・・』
第二話
↓START↓
「フィリアさんッ。よかった、大丈夫だったんですね！」
キリエルがすっかりセネアとの戦闘を忘れてしまったかの様に安心する。
「・・・・キリエル。アレはフィリアじゃない」
ホートロームと戦っていたケアティルは、フィリアを睨みつけながら言う。
確かに、女性というより、男性に近い口調でフィリアは発言している。
更に、『私』ではなく、『我』という言葉を使っている。
「えッ・・・？どういう事？」
「さよう、そこの剣士の言っている事は正しい事だ。今、この・・・フィリアという女は、我が支配している」
「どういう事だ」
「フッ・・・・。どうせ、お前らは我の手によって、死ぬのだ。死にゆく者に何を言っても、意味がない」
「・・・・・貴様、モンスターだな」
ホートロームがケアティル同様、フィリアを睨みつけて言う。
「ほぅ、やはりわかるか。・・・・そうだな、この中で、お前が一番歯ごたえがありそうだな」
「ふん。貴様も中々出来そうな奴だ。この剣士より、貴様の相手の方が楽しいだろう」
「さて・・・・この魔物の断末魔を・・・・序曲にでもするとしよう」
「・・・・氷結は絶壁 並ならぬ力なくして砕けぬは世の理 今その氷結の絶壁を我の前に召喚し 我を完全な守りの箱に包まん・・・・。アイスウォール」
ホートロームが唱えると、ホートロームの目の前に大きな氷が現れた。
「・・・・まずは、そちらの力を拝見するとでもしよう」
「そう言っていられるのも今だけだ・・・くくく」
ホートロームは不気味な笑みを浮かべ、両手を上に上げて、またニッと笑みを浮かべる。
「全てを無にせん！自然の守護神エヴァよ 汝のその絶対破壊の力を我に託せ 『世の滅亡は理 いつかは滅びゆくのならば 神の手により滅ぶ道を我らは選ばん 世を滅びへと導くにあたり 自然の守護神エヴァの力は必要にならん』 今 汝の力を受けるための呪文を唱えた・・・・・・・。全てを雷と風の力により終わらせん！・・・・・・・」
「・・・・・・・ふん・・・。くだらぬ呪文を唱えるか・・・。・・・・・・・・・・」
「ロードオブヴァーミリオン！！」
ホートロームの長い詠唱が終わると、ゴゴゴ・・・・という音がした。
「まずい、キリエルッ！！ここから離れろ！！」
言われるまでもなく、キリエルはリナムと一緒に、その場を離れた。ラバースも、よろめきながらも逃げ、ケアティルも全速力で逃げる。
勿論、セネアもだ。
ホートロームと、フィリア以外が逃げ出している途中、大きな爆発が起こった。
イズルードまで巻き込みそうな破壊力で、周りにあった木や、草むらに隠れていたファブル、ポリン等が吹き飛んでいってしまう。
ホートロームはその爆発で起きた爆風の中、勝ち誇った様に笑う。
「フフ・・・ハハハ。口程にもない。手加減し過ぎてやられてしまったか！？ハハハハハハ・・・・！」
キリエル達は体を伏せ、爆風が止むのを待った。
・・・・・・。
・・・・・・。
やがて、爆風が止む。
キリエル達は、爆風が止んだとわかると、体を起こす。
「・・・・さて、邪魔者は消えた・・・。あの剣士を殺るとするか・・・」
「・・・大した威力ではないな。今ので自分の最高の力だと思っているか？・・・・そういうのを、自意識過剰というのだよ」
「なっ・・・・！」
爆風の中から、傷一つ負っていないフィリアが不気味な笑みを浮かべ、立っていた。
「き・・・貴様、なぜ生きている・・・」
「セーフティーウォールだ」
「何ッ？セーフティーウォールだと！？・・・・セーフティーウォールでロードオヴヴァーミリオンは防げないハズ・・・・」
「防げるさ。ただ単に、お前のロードオブヴァーミリオンの威力が弱すぎただけさ」
「・・・そんなハズは・・・」
「さて、お前は、我を失望させてくれた・・・・。予想以上にお前は弱い。・・・・・今から一分・・・一分で死んでもらおう」
「・・・・・・！」
ホートロームはフィリアに恐怖を感じた。
そう、ガルバの様に・・・・。
「我が身に眠りし紅蓮の炎よ 火界王パイモンの名を以って解き放たん 汝らを一つとし 我が前にいる愚かなる者に灼熱を与え貫け。ファイヤーボール」
フィリアは両手を前に出して唱える。唱えると、フィリアの両手から、サイトの炎より少し大きい火の玉が召喚された。
そして、その火の玉・・・・ファイヤーボールがホートローム向って飛んでゆく。
それをホートロームはサイドステップでかわす。
「今唱え現る氷は我の氷 何もを包む氷の様に冷えた心 氷の前にはなす術は無い。アイスウォール」
サイドステップし、ファイヤーボールを避けたホートロームの周りから大きな氷の壁が地面から一瞬にして現れる。
それは、ホートロームを閉じ込める。ジャンプして抜け出そうにも、上にも氷が張ってあり、完全密室となっている。
オマケに、氷で覆われているため、辺りが真っ暗で何も見えない。
魔法で壊そうにしても、対象は自分を閉じ込めている氷。自殺をするとしか言い様がない。
だから素手で壊そうといっても、無理な話だ。
ホートロームは魔法専門。拳の力は全くといっていい程ない。それ以前に、アイスウォールを拳で砕くなど無理な話だ。
「さぁ、また一匹の魔物がこの世から消え去る。・・・・天国へゆける事を祈ろう」
アイスウォールの檻の外からはフィリアの声が聞こえる。
「・・・・ぁ・・・・ぁぁ・・・！セネアッ！！セネアァ！！助けてくれ、助けてくれェ！！」
「・・・・・ホートローム・・・・・！」
「おっと、もう一匹の魔物よ。今ゆけば貴様も死ぬ事になるぞ」
「・・・・・」
「フッ。どうせ、次に我に殺されるのだがな」
「・・・・・・・・ッ！！」
「・・・・さて、残り３０秒をきるな・・・。・・・・・氷結の矢よ 我に眠りし冷たき精を開放し具現せん。コールド・ボルト」
一本の氷の矢がフィリアの前に召喚され、氷の矢はアイスウォールの檻目掛けて飛んでゆく。
「ホートローム！！」
セネアが走り出し、アイスウォールの前に立ちはだかる。
「何・・・・？」
「セネアッ・・・・！？」
グサッ・・・・・。
「がはっ・・・！！」
キリエルと、ケアティルの見た光景。
それは、本当はアイスウォールの檻に入ったホートロームに直撃するハズのコールド・ボルトの矢。
それが、走りこんでアイスウォールの檻の前に立ちはだかったセネアの腹に刺さっている光景・・・・。
「・・・・ホート・・ローム」
「セネア・・・？おい、どうしたんだ？何があったんだ！」
当然、ホートロームは外の光景を知る事はない。
「・・・ホートローム・・・・。私達に手を貸してくれて・・・・・ありがとう。結局・・・私は・・・悪魔を殺す事は出来なかった。でも・・・・・ホートローム・・・、君が・・・私達に手を貸してくれた事には本当に・・・感謝している」
セネアがかけていたメガネが地面に落ちる。
それと同時に、セネアの口から吐き出される血も地面にボタボタ落ちる。
いつの間にか、セネアの目からは、涙が溜まっていた。
そして、その涙は地面に落ちる。大粒の・・・涙がボタボタと落ちる。
「本当に・・・・・・ありがとう」
セネアは笑って言うと、バタッと倒れこむ。
「・・・セネア？・・・セネア！セネア！どうしたんだ！セネアァ！！！」
「・・・・お前を助けるために、自ら氷の矢に刺さって死んだよ」
フィリアがセネアをあざ笑いながら言う。
「・・・・何・・・だと！？・・・・そんな・・・・」
セネアの腹に刺さった氷の矢は、消滅されたかの様に消える。
そして、セネアは、段々、人間の姿から、一匹のモンスターの姿に変わる。
「・・・・やはり、あの魔物の剣士と同様、九尾狐だったか」
「・・・・セネアとガルバが・・・九尾狐・・・・」
キリエルは、セネアの本当の姿を、初めて見る。
ケアティルも、ラバースも。・・・・リナムも。
「・・・・この魔物のせいで、予定が狂ってしまったな。・・・・さて、今度こそ、お前の番だ」
アイスウォールの檻の中にいるホートロームに言う。
「・・・・お終い・・・・か。もう少しだけ、楽しみたかったのだがな。・・・・まぁ・・・いいとするか。ガルバ、セネアの元へ・・・私も行こう」
「氷結の矢よ 我に眠りし冷たき精を開放し具現せん。コールド・ボルト」
先程同様、フィリアの目の前に一本の氷の矢が現れ、アイスウォールの檻目掛けて飛んでゆく。
「ａｍｅｎ」
バリンッ。
氷の矢は、アイスウォールの檻を寛通する。
勿論、その中にいたホートロームに刺さる。
氷の矢が消える・・・・。
アイスウォールに空いた大きな穴の中に、血を流し死んだホートロームの姿がある。
その姿は・・・・形は人間のままなのだが、少し体の色が黒っぽくなっている。
「・・・ドッペルゲンガーか・・・・・。ドッペルゲンガー如きが我に向っていたのか・・・・」
「おいお前！何者だ！」
「・・・・・？」
リナムを草むらに隠し、出てきたキリエルの姿。
ケアティルも歩き出し、キリエルの隣につく。
「・・・・人間・・・か」
「貴様、フィリアではないな。一体何者だ」
「・・・・言っただろう？死にゆく者に名乗っても無意味だと・・・」
「僕達はそう簡単には死なないッ！」
「生憎、死ぬ予定もないしな・・・・・」
「・・・ほぅ。度胸のある人間だ。くくく・・・面白い。・・・・頼もしい奴等よ・・・。いいだろう・・・・」
強い、夜風が起こった。
その時、フィリアの意識を支配している者が口を開ける。
「我の名はバフォメット。ルーンミッドガッツ王国で最凶と呼ばれた魔物だ・・・・」
＞＞＞ 管理人より ＞＞＞
バフォ様ｷﾀ-!!
いや、今回はその一言につきるでしょう（笑）
やっぱりフィリアさんはただ者ではなかったのですね。うん。
これから、キリエル達とフィリアさん（てかバフォ様）との戦いが展開していくのでしょうか！
乞うご期待！