Q.グラストヘイムってどう行くの?
A.ポタ屋に頼みましょう。
・・・・。
・・・・。
Q.それじゃ話になりません! 話になるような道を教えてください!
A.とりあえずオーク村にでも行きましょう。
・・・・。
・・・・。
ってことで(?)・・・・・。
何で俺、こんな所にいるの?
―Do you come to Vast World,too?―
向かってくる奴は、はぁはぁと荒い息を吐いている。右手には斧を持っている。
この鬼――オークウォリアーって名前らしいが、強面のわりにはあんまり強くない。ただ力任せに斧を振り下ろしてくるだけだ。
しかも斧を振り下ろそうとする時に隙ができるから、その間に俺の愛用の短剣、『アサシンダガー』と『スクサマッド』で切り刻める。
脳を一突きすればお終いだが、オークはヘルムを被っていて、これが結構意頑丈なヘルムで、アサシンダガーとスクサマッドじゃ壊せない。
「ったくどこから湧いてくるんだこいつらはっ!」
今俺は囲まれている。
今見えるオークの数は、5匹。
しかし、この程度ならば、10匹一気にかかってきたって俺は負けやしないだろう。
「ウォォォォ!!!」
叫び声を上げながら、オークは斧を振り下ろす。俺はそれをかわすと、左手に持ったスクサマッドで、オークの右肩から下に振り下ろす。
そのオークは断末魔を上げ、地面に倒れた。
正直言って詰まらない。
そこで俺は閃いた!
プロンテラを出る前に買ったこいつを使ってみよう。
俺はウエストポーチから鞘に収まった短剣を取り出した。形はアサシンダガー、スクサマッドと違う、ちょっと変わった形をしている。
そう、その名も・・・・。
「フォーチュンソード!!」
財産剣。それは幸運をもたらしてくれる。別名幸運剣。
オークが隠し持っている物を、もしかしたら入手できるかもしれない。
「あ〜っはっはっは! 全ては金のため! トレジャーハンターは貧しいんだぁぁぁ!!!」
俺が壊れていく。
結果。
何も入手できませんでした。何も持っていませんでした。オークも貧乏。
こんな所で鬼と戯れてる程俺は暇じゃない。急いでグラストヘイムに行かなければならない。
だが、もう日が沈みかけている。
ここで野宿するわけにもいかないし・・・・。
そういえば、この近くにゲフェンっていう魔法都市があったはずだ。
今日はグラストヘイムを諦め、夜までにゲフェンに到着しよう。
俺は早足で歩き始めた。
「でやぁぁぁぁ!!」
どこかから大きな声が聞こえる。その声の後、ガキン、と金属と金属がぶつかり合う音がした。
「ウォォォォ!!!」
そして、オークの叫び声。
どうやら声の主と、オークが戦っているようだった。
声がする方は、俺が進む先の方。そのまま真っ直ぐ進んでみると、思ったとおり、そこにはオークと戦っている人物がいた。
茶色の髪にメントルを着ている少年だ。
少年はオークの斧を、剣で抑えていた。しかし力負けして斧の餌食になるのは時間の問題だろう。
やはりここで俺はあの少年を助けるべきなんだろうか?
そうすればストーリー進行しますよね?
・・・・じゃなくて!! 助けなかったら俺はもやは人ではない!
えぇい横殴りだとかBOTだとかPOTだとか(?)言われるかもしれないけど知った事かぁぁぁぁ!!!
俺が壊れていく。
なんだか言っちゃいけない様な事も言ってる気がするし・・・・。
「く・・・・っ!」
そろそろ限界の様だ。少年がオークの斧に押されていく。
俺はアサシンダガーとスクサマッドを手に取ると、走り出し、オークの背中をアサシンダガーで斬りつけた。
オークは突然の攻撃に驚き、少年に攻撃するのを止め、少し離れた場所にいる俺に目を向けた。
「ウォォォォ!!!」
オークは叫び声を上げる。
俺はオークがこっちに来る前に・・・・というよりこっちに向かって走り出す前に、一瞬でオークの目の前に現れ、今度は脇腹を斬りつけた。
斬りつけられた痛みでオークがひるみ、そして一瞬の隙が生まれる。
「今だ!!」
俺が少年に言うと、少年は剣の切っ先を、オークに向ける。
「少年よ神話になれぇぇぇ!!!」
俺が壊れていく。
これで三度目だ。
少年はオークの胸部に、剣を突き刺した。
オークは断末魔を上げ、血を流し、地面に倒れた。
「大丈夫だったか?」
「えっ、あ・・・・はい」
「ならよかった」
「あの・・・・、ありがとうございます」
「礼を言われる程の事はしてない。・・・・それより、一つ訊きたいんだが・・・・・」
「なんですか?」
「ゲフェンって街へはどう行けばいいか知ってるか?」
「ゲフェンですか?」
「そう」
「それなら、僕が案内します。お礼もしたいし・・・・」
「そうか? じゃあ、お願いするよ」
別にお礼はいらないんだけどな。お金だったら・・・・・いやいや!
「僕、リット=シェインっていいます!」
「俺はフローティル=エバンズだ」
襲ってくる魔物は俺が退治。リットは道案内。そんな感じで、日が沈んだ頃、俺達はゲフェンの近くまで来ていた。
オークが沢山いた所は、オーク村と呼ばれているらしい。オークが住む村で、オークの住む洞窟もあるらしい。
いやぁ、オークレディなんてのを見た時はある意味死ぬところだった。吐き気に襲われた。
「エバンズさんは、トレジャーハンターなんですか?」
「あぁ。シュバルツバルドから来た」
「シュバルツバルドから来たんですか!? 僕、一度シュバルツバルドに行ってみたいんですよ。でも、シュバルツバルドに行く道にいる魔物達に敵わなくて・・・・」
「時間はかかるかもしれないが、強くなれば、魔物達もケチョンケチョンだ」
「強くなれるかな・・・・」
「努力、訓練、経験。それらを沢山積んでいれば、強くなれるさ。お前より人生経験豊富な俺が言うんだ。間違いない」
「はい。・・・・・僕も、トレジャーハンターになってみたいな・・・・」
「なれるさ」
「ありがとうございます。・・・・あ、もうゲフェンの門が見えてきましたね」
日が沈んだ頃、俺達はゲフェンへと到着した。
人の数は少ない。みんな夕食時だからだろう。
さて、宿を取らないとな・・・・。
「エバンズさん、今日どうします?」
「どうするって・・・・。宿とって、明日には出発かな」
「だったら、僕の家に泊まっていきませんか?」
「え?」
「これくらいしか、お礼の方法がないんです。やっぱり・・・・ダメでしょうか?」
「いんや。一夜だけだけど、世話になるよ」
『宿代浮くから是非泊まらせてくれ!』
だなんて言えるわけない。
「ホントですか!」
「本当だとも」
「ついてきてください。僕の家に案内します」
リットは、なんだか嬉しそうだった。
友達とかそういう関係の無い、他人の俺を自分の家に泊めてくれる人は、そういないだろうに・・・・。
変わった奴だな・・・・。
そして一つ分かった事がある。
俺、誰でもいいから人が近くにいないと、一人だと、壊れるようだ。