「・・・まあ、そんな感じで、パパとママは三回戦に勝って、ベスト８まで行ったんだ」
「パパもママもスゴイんだねー」
「ありがとう。ベスト８は二日目だったけど、その日は大雨で次の日に延びたんだ」
「そうでしたね。あの大雨の日からでしたね・・・。
フィースさんをはっきりと意識し始めたのは・・・」
「わあ、ママってアツアツ〜♪」
「ちょ、ちょっと、フィリア・・・」
永遠のパートナー 後編
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
三回戦までが終わり、フィースとリアはベスト８に勝ち残った。
そして夕方になり、大会は一日目を終える・・・。
【選手・パートナーの方は、宿泊形式をお知らせくださいませ。繰り返します・・・】
「宿泊形式・・・？それって何でしょう？」
「ああ、何か宿にするかコテージにするか決めるんだってさ。
選手とパートナーの絆がちょっとでも深くなるようにって意味が込められてるとか。
まあ、強制じゃないから、別々の所に泊まることも可能らしいんだ」
「そうなんですか・・・という事はつまり・・・」
「一晩、同じって事になるね」
「えええ！！？わ、わわ、私がフィースさんと、同じ部屋か一つ屋根の下で・・・」
リアの言葉はだんだん小さくなっていったが、
それでも聞こえないほどではなかった。
「ちょっと、恥ずかしいよね・・・でも、早く決めないとね・・・」
「あら、リアじゃない。それにフィースさんも」
「おや、どうなされたんですか？」
エリーヌとルースが声をかけてきた。
この二人も、順当に勝ちあがってきていた。
「ええ、ちょっと・・・」
フィースは事のいきさつを話した。
「そうですか・・・宿かコテージかで悩んでいると」
「それなら、私達と同じコテージにしませんか？」
「「え？」」
エリーヌの提案に、フィースとリアの二人は声を揃えた。
「ちょうど四人制のコテージなったんですけど、
二人では少々広いと思ったので・・・どうでしょう？」
「それはいい案ですね。面識のあるフィース君とリア君なら、話も弾むでしょうし」
「そうですね。僕も異存はありません。リアはどうだい？」
「はい、私も構いません」
「それじゃあ、受付に報告に行きましょう」
こうしてフィース・リア・エリーヌ・ルースの四人は、
大会運営委員が用意したコテージへと向かった。
そのコテージは建てられて真新しいという雰囲気を醸し出していた。
「うん、なかなかいい所だね、リア」
「はい。私、こういう所に住んで見たかったんです」
「では、部屋割りを・・・といきたい所なのですが・・・
決める必要はありませんでしたね。
すでに登録した組で決められてます」
エリーヌが差し出した紙には、コテージの部屋割りが書かれてあった。
そこには、リア・フィース、エリーヌ・ルースという組合せで書かれていた。
「コテージ形式なので、食事は外食か自炊という事になりますが・・・。
残念ながら、私達は料理はそれほど得意ではないんですよ」
ルースが困ったように言う。
「僕は苦手ではないんですが、レパートリーが少なくて・・・」
「リアの料理は格段においしいのですけれど、
一日目の戦いが終わって疲れているリアに負担はかけたくありませんし・・・外食ですね。
せっかく用意された食材がもったいないですけれど・・・」
三人は悩み始めた。
その時、リアが口を開いた。
「でしたら、私が作ります。がんばってみなさんの夕食を作ります！」
「リア、疲れているんだろう？僕はパートナーとして、
あまり疲れを残すような事は「心配なさらないでください、フィースさん」・・・リア？」
「私は、みなさんに恩返しがしたいんです。
いつも私のことを気にかけてくれた、エリーヌさんにルースさん。
それに・・・見ず知らずの私に、声をかけてくださり、
パートナーになってくれたフィースさんに・・・。」
リアは微笑みながら話した。
「フィースさん、こうなったらリアは引き下がりませんよ？」
「こういう時のリア君は、我々ですら止めれませんからね」
「リア・・・わかったよ。君が大丈夫だって言うなら、止めはしない。
だけど、何か手伝える事があったら、遠慮せずに言ってくれていいよ」
「はい、ありがとうございます！」
こうしてリアは、四人分の夕食を作る事となった。
その間他の三人は、雑談で盛り上がっていた。
「・・・リアったら寝起きが悪くて、いつも起こすのに時間がかかってしまうんですよ。
眠りの深さなんて関係ないんです」
「一時期眠り姫って囁かれてね。本人は知らなかったけど」
「それは大変そうですね・・・」
「フィースさんも明日の朝は大変ですね。
一応、私達も起こしに行きますから」
「はは・・・お願いします」
エリーヌは苦笑しつつ、フィースに伝えた。
その後も三人はお互いの生活などについての雑談をかわしていた。
やがて、夕食ができあがった。
「みなさーん、夕食ができましたよーー！！」
「お、リア君、出来たみたいですね」
「では参りましょう。リアの料理は絶品ですよ」
テーブルの上には、様々な料理が乗せられており、
どれも素晴らしい出来前だった。
「「「「いただきます」」」」」
「おいしい！リアって料理が凄い上手なんだね。
こんなにおいしい料理、初めてだよ！」
一口食べ、フィースは正直な感想を洩らした。
「あ、あの、ありがとうございます・・・」
リアはそう言いつつ、顔を赤くしていた。
「我々の住んでいる寮の食堂のおばさんも昔コンテストで優勝したとかで、
料理の腕はかなりのものなんだけど、リア君の料理はそれ以上のものなんだ」
「はぁ、そうなんですか」
フィースは感心していた。
「でも、リアとお付き合いする方は羨ましいわ。
こんなにおいしい料理を毎日作ってくださるでしょうし」
「そんな、お付き合いだなんて・・・（私とフィースさんは、まだ・・・）」
エリーヌの言葉に、リアの顔はまた赤くなった。
「どうしたんだい、リア？」
「っ！な、何でしょう？」
「何か顔が赤かったから・・・大丈夫かい？」
「は、はい！ど、どうか、ご心配なさらないでください！
ちょ、ちょっと湿気が多くて、ジメジメと蒸し暑く感じたので・・・」
リアは誤魔化すように言ったのだが、実際には少々湿気が多く、蒸し暑く感じられた。
「あら、本当・・・」
「これは・・・明日は雨ですかね」
ルースは雨が降るであろうことを呟いた。
「僕の親友の話では、少々の雨なら大会を続けるみたいです。
そうでない場合は、順延するとか」
「・・・まあ、それはそれとして、早く食事の続きといたしましょう。
せっかくのリアの料理が冷めてしまいますからね」
「ふう、ごちそうさまでした。おいしかったよ、リア」
「あ、ありがとうございます、フィースさん。
では、食器等の片付けをしてまいります」
「ああ、僕も手伝うよ。おいしい料理を作ってくれたお礼にと思ってさ。いいかな？」
「はい、フィースさんさえよろしければ」
「エリーヌさんとルースさんはゆっくり休んでいてください。
僕達だけで大丈夫ですし」
「そうですね・・・四人もいると少し狭くなりますし」
「ではお言葉に甘えて、休ませてもらいましょう」
フィースはリアの食器洗いや片付けを手伝った。
思いのほか食器は多く、二人でも少々時間がかかりそうであった。
「（どうしてあの時、フィースさんの事が思い浮かんだのでしょう・・・）」
あの時とは、食事中、エリーヌがリアと付き合う者について話した事だった。
「（確かに、フィースさんは優しいし、温かくて、傍にいると安心できますし・・・）」
「リアー？」
「（できる事なら・・・いえ、今は目の前の事だけに集中しないと・・・）」
「おーい、リアー」
「は、はい！な、何でしょうか？」
フィースはやや声を大きくし、リアに呼びかけた。
その声に気付き、驚くリア。
「何かまたボーッとしてたから・・・大丈夫かい？」
「ちょ、ちょっと考え事を・・・あ、もう終わられたんですか？」
「うん。僕はこういうの得意なんだ。
それで、まだ終わってないリアの分を手伝おうかなとも思って」
「私なら大丈夫ですので、フィースさんは休んでいてくださいますか？」
「うーん・・・まあ、リアが大丈夫だって言うなら・・・でも、無理はしないように」
「はい」
そしてフィースは部屋に戻っていき、
リアは再び作業を開始した。
やがてリアも食器洗いと片付けを終え、部屋に戻っていった。
部屋には、エリーヌとルースもいた。
「あ、みなさんどうなさったんですか？」
「お疲れ様、リア。私と一緒にお風呂に入らない？」
「え？」
「ちょうど二人で話したい事もあるの。いいかしら？」
「はい、わかりました」
「私もフィース君と話したい事があってね。いいかな？」
「ええ、構いませんよ」
〜リア・エリーヌＳＩＤＥ〜
「それで、お話したい事って何でしょう？」
「ええ。リアはフィースさんの事をどう思っているのかと思って」
「フィースさん、ですか。フィースさんはとても優しい方だと思います。
優しくて、温かくて・・・とても信頼できる方です」
「そう・・・」
「でも、どうしたんですか？」
「ちょっと、ね。リアが初めて会った人にあんなにベッタリするなんて、
少し珍しいと思ったから」
「ベ、ベッタリって・・・何か恥ずかしいです」
「リア」
「はい」
「フィースさんは優しい方だから、油断していると他の人に取られるわよ？」
「え、えっと、それは一体どういう・・・」
「早く自分の気持ちに気付くといいわね・・・」
〜フィース・ルースＳＩＤＥ〜
「え？リアの事をどう思っているか、ですか？」
「ああ。ちょっと気になってね」
「そうですね〜・・・リアはとても優しくて、いい子だと思います」
「そうだね」
「例えるなら・・・月と太陽ですかね」
「月と太陽、かい？」
「はい。リアは純粋で、強い意思を持っていて、夢に向かって真っ直ぐで、
月のように神秘的で凛としている所もあるけど、
太陽のような優しさ、温かさも持っている・・・僕はそう思っています」
「なるほど・・・言われてみればそうだね。
でも初めて会ったばかりの子を、そこまで思っているという事は、ひょっとしてフィース君は・・・」
「・・・好きですよ、リアの事が。
リアの方はどう想っているかわかりませんけど」
「リア君も、同じじゃないかな、多分。
彼女の事だから、まだ気付いてはいないだろうけど」
「・・・大会が終わった後に、伝えようかと思っています」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして次の日・・・本来ならばベスト８からの戦いが予定されていたが、
大雨のため中止になってしまっていた。
「んー、ルースさんの言ったとおりになったなぁ・・・」
（コンコン）
「おはようございます」
ドアをノックする音がし、エリーヌの声が聞こえてきた。
フィースがドアを開けると、そこにはルースもいた。
「おはようございます、エリーヌさん、ルースさん」
「おはよう、フィース君。念の為、リア君を起こしにきたけど・・・」
「まだ眠っているみたいですね・・・リア、朝よ。起きなさい？」
「リア君、朝だよ。今日は大雨で大会が延期になったよ？」
エリーヌとルースは何度も呼びかけたり、強く揺すったりしてリアを起こそうとしたが、
全く起きる気配が無かった。
「・・・困りました」
「今朝はまた一段と深い眠りについてますねぇ・・・」
「大変ですね・・・」
少し離れた所で見ていたフィースは、リアの寝ているベッドに近寄った。
「フィースさん、ルースさん、
こうなったら三人で「リアー、朝だよー。早く起きたほうがいいよ〜」
・・・フィースさん、リアはそんな事では・・・」
エリーヌの言葉は続かなかった。
何故なら、フィースの起こし方で、リアが簡単に目覚めたからだ。
「ん〜・・・ふぁ・・・おはようございます・・・」
「嘘・・・」
「あのリア君が簡単に起きるなんて・・・」
エリーヌとルースは、目の前の出来事が信じられないような顔をしていた。
「おはよう、リア。よく眠れたかい？」
「おはようございます、フィースさん。
何だか、いつもより良い目覚めができたみたいです。
あ、エリーヌさん、ルースさん、おはようございます。
二人揃って、どうなさったんですか？」
「え、その・・・リアがそろそろ起きる頃だと思って・・・」
「う、うん、今日は大雨で大会が延期になったから、
それを伝えようと・・・」
「延期、ですか・・・でももう一日、皆さんといられるなら・・・あっ！」
「ど、どうしたの、リア？」
「朝食の用意がまだでした・・・すぐ着替えて用意いたしますので！」
リアは着替えを持ち、風呂場の脱衣所へと走っていった。
「今日は大会が無いんだから、そんなに急ぐ事ないのになぁ・・・」
フィースは苦笑しつつ、ドアの方を見つめた。
「あの、フィースさん・・・」
「？」
「少しお聞きしてもよろしいでしょうか？」
「何でしょう？」
「何故、リアを簡単に起こすことができたのですか？
それも特別な起こし方ではなく、私達と同じようにして・・・」
「何故って言われましても・・・話に聞いていたより、リアが簡単に起きたんで、
『あれ？』って思ったりしました」
「そうですか・・・すいません、変な事をお聞きして」
「いえ、こちらこそそちらが納得いく答えが出せずに、すいません」
「さしずめフィース君はリア君の・・・専用の目覚まし時計という所かな」
「はは、目覚まし時計ですか。それいいですね」
「フィースさん、明日もよろしくお願いしますね」
そして雑談を交わしているうちに、朝食ができたとリアが呼びかけてきた。
話をしつつ、朝食を終えた四人は、それぞれの部屋へ戻っていった。
「ん〜・・・暇になったね」
「そうですね・・・武器の手入れをしても、少ししか時間を潰せませんし・・・」
（ゴロゴロゴロ・・・・・・）
「雷か・・・」
「そ、そうみたい、ですね・・・」
「・・・リア？」
心なしか、リアは緊張していた。
（ガガァ！）
「きゃああ！！」
「リア！？」
リアは雷の落ちた音に反射的に反応し、うずくまった。
「わ、私、雷は苦手なんです・・・魔法とかのか、雷じゃなくて、
自然に発生する、雷が・・・きゃああ！だ、誰か・・・」
「リア！」
フィースはリアを無意識に胸元へ引き寄せた。
「あ・・・」
「大丈夫。僕がいるから。僕が守ってあげるから。
だから、安心していいんだ・・・」
「・・・は、はい」
「リア、大丈夫！？」
その時、エリーヌがドアを開けて部屋に入ってきた。
リアは引き寄せられたままの状態で、エリーヌの方に振り向いた。
「あ、あら・・・お邪魔だったようね・・・」
「い、いえ・・・それよりもエリーヌさん、どうして・・・」
「リアが雷が苦手だったって事を思いだして、
それで心配になって・・・でも大丈夫みたいね」
「はい。フィースさんがいてくれましたから・・・」
「そうだったの。フィースさん、ありがとうございます。
雷が苦手なリアには、誰か特別な人がそうしてあげないと、落ち着かないんです」
「そうだったんですか・・・でも無意識に反応したんです。
どうしようと考える前に、自然に」
「それじゃあ、もう大丈夫みたいだから、私は部屋に戻ります。
リアに何かあったらまた呼んでください」
「はい、わかりました」
そしてエリーヌは部屋に戻っていった。
まだ雷は鳴っているが、リアの震えはだいぶ収まっていた。
「もう大丈夫かな、リア」
「はい・・・でも、もう少し・・・もう少しだけこのままで・・・（離れたくない・・・）」
「・・・うん、リアの気がすむまでこうしててあげるよ」
「「（できることなら、このままずっと・・・）」」
やがて雷は遠のき、大雨も止み始め、
空から日の光が差し込んでいた。
そしてフィースとリアは少し離れた。
「すいません、ご迷惑をおかけして・・・でも、安心できました」
「気にしなくていいよ、リア。僕にできる事なら、何でもするから」
「はい、わかりました。それでは、早速なのですが・・・」
「なんだい？」
「私と一緒に、買物に行ってくれますか？
昼食と、夕食の買物を一緒に済ませたいので・・・」
「わかった。荷物は僕が持つから、ちょっと多めになってもいいよ」
二人はエリーヌとルースに買い物にを行くことを告げ、街に出た。
それからは何事も無く、昼食、夕食も済ませ、
次の日を迎えた・・・。
『さあ〜、昨日は大雨で大会が今日に延びてしまったが、
選手のコンディションに影響は無い模様！
今日はアーチャー部門の二日目、
ベスト８の特設フィールドのサバイバルバトルから決勝までの試合をお届けするぞ〜〜！！
このサバイバトルは基本的には、
各所にあるターゲットを時間内に多く取った選手がベスト４に進めるが、
今回はパートナーの選手も協力しあえるぞ！
しかし、選手同士の戦いもあるので、要注意だ！』
そしてベスト８の戦いが始まり、盛り上がる観客席。
そこには、ウェイン達もいた。
「雨の日の後のサバイバルバトルか・・・足元に気を付けねえとな」
「うむ。時々足を滑らせたり、捻挫したりする者がいるからな。
まあ、お前の場合は足を滑らそうが捻挫しようが、
そんな事はお構いなしに戦い、優勝してしまったからな・・・」
「あの時、私達がどれだけ心配したか・・・」
「わ、悪かったよ姉貴・・・もう無茶はしねえよ（多分）」
そんなウェイン達を他所に、
フィース達は順調にターゲットを取っていった。
「フィースさん、取れるターゲットは出来るだけ取りましょう。
多くあって困ることはないでしょう」
「そうだね。でもそれだけじゃなく、他の選手達の動きにも気を付けないと」
「はい」
『お〜っと、リア選手とフィース選手、素晴らしい動きで次々とターゲットを取っていく！
予選からの快進撃は、未だとどまる事をしらないぞ〜！！
あ・・・と、こ、これは！！』
「・・・それなりに覚悟してましたが、本当に戦うことになるとはね・・・」
フィースはそう口にし、剣を構えた。
目の前に、エリーヌとルースがいるからだ。
「エリーヌさん、ルースさん・・・」
「このサバイバトルは、選手同士で戦うこともできるわ。
決勝でもよろしかったけど、今ここで戦うのも悪くないわね・・・リア」
「リア君、フィース君・・・君達と戦える時を待っていたよ」
『何という事だ〜！！予選から快進撃を続けてきた初出場のリア選手・フィース選手と、
前大会優勝者のエリーヌ選手・ルース選手が鉢合わせた〜〜！！』
「いくわよ・・・リア！」
（バシュッ）
エリーヌの弓から放たれた矢が、リアめがけて飛んでいく。
しかしリアは、紙一重でそれをかわし、反撃に出た。
「アローシャワー！！」
一度に大量に放たれた矢が、今度はエリーヌ達に襲いかかった。
さすがのエリーヌ達もこれはかわしきれず、わずかながらもダメージを負った。
「腕を上げたわね、リア・・・でも、私の方がまだ上みたいね」
「っ！いつのまに足に・・・！」
リアの攻撃はエリーヌの腕をかすめ、
エリーヌはリアの一瞬のスキをついて攻撃し、リアの足をかすめた。
そして数分間戦いが続いた。
「中々やりますね、ルースさん」
「これでも、私の方は全力なんだけど・・・ね・・・」
「僕としては決勝で戦いたいんで、ここら辺で終わらせますよ。
リア、行くよ！！」
「はい！！」
フィースの目を見て、リアは瞬時に何をするか判断し、
フィースの言葉に答えた。
「マグナムブレイク！！」
（ドォォォン！！）
フィースのマグナムブレイクが勢いよく地面を撒き上げ、
目の前の視界を遮った。
「っ・・・これでは前が・・・」
エリーヌ達は落ちてくる土を防いでいた。
やがて前が見えてきた頃には、フィースとリアの姿は見えなくなっていた。
「やられてしまいましたねぇ・・・」
「ええ・・・リアは本当に強くなりました」
『おっと、リア選手とフィース選手が離れたぞ？
これは後への体力温存という事なのか〜！？』
「ま、それもあるけどね・・・」
「他に何かあるんですか？」
「それは後で話すよ。でも今は」
「はい。このベスト８に勝ち残る事だけを考える、ですね？」
「その通り。さあ、もう一息だ。頑張ろう！」
そして、ベスト８の戦いが終わった。
フィースとリアのチームは、無事に準決勝に勝ち抜き、
エリーヌとルースのチームもまた、準決勝に勝ち抜いた。
「もしかしたらって思ったけど、決勝で当たる事になるね」
「そうですね。でもその前に、準決勝があります」
「そうだね。準決勝の相手は・・・ん〜・・・」
「どうしたんですか？」
「この相手のパートナー、元盗賊団のナンバー２・マルスさ。
髪型とか変えてるけど、その目つきでわかる」
「そうなんですか・・・では、何としても勝たなくてはいけませんね」
「ああ・・・念の為、マスターにも連絡しておくよ」
そして準決勝第一試合。
フィースとリアは、マルスのいるチームと戦うことになった。
アーチャー同士の戦い、パートナー同士の戦いと続き、
決着がつかない場合はタッグ戦という事になった。
「タッグ戦になると、マルスはどんな卑怯な手を使ってくるかわからないからね。
絶対に持ち込まないようにしよう！」
「はい！それでは、行ってきます」
「ああっ！あいつ、俺達が壊滅させた盗賊団のマルスじゃねえか！
あの野郎、どこに行ったかと思ったら、この大会に出ていやがったのか！！」
「声が大きいぞ、ウェイン」
「す、すまねえ、マスター・・・」
「気にするな。だが、奴が本性を現すまで、
泳がせなければならない・・・どんな卑劣な手を使ってくるかわからないからな」
「盗賊団の親玉のバンデルはまだ潔かったが、
奴だけは相当卑劣だったからな」
「フィースならあの程度問題ないでしょうけど、
リアが心配ね・・・あら？レミアは？」
「ん？レミ姉なら、用事があるってさ」
「そう・・・」
『さあ、準決勝第一試合一本目、リア選手対ウォーラ選手の試合は、
リア選手が見事勝ち抜きました。
続けて二本目、フィース選手対マルス選手の戦いだ〜！！』
「手前の事だ・・・俺様が誰なのかわかっていやがるんだろ？」
「わかっているさ・・・マルス！！」
フィースのその眼はいつもの優しい眼ではなく、
卑劣な者に対する怒りを秘めた眼であった。
「ククク・・・手前らに組織を壊滅させられた恨み、
今こそ果たしてやる！」
マルスが二刀の短刀で襲い掛かってきた。
その短刀には、毒が塗られていた。
「懐に入ればこっちのもんだ！食らえ！！」
「甘い！！」
フィースはさらに深くしゃがんでマルスの短刀をかわし、
自分の剣の柄頭でマルスの腹をついた。
「ぐはぁ・・・！」
『お〜っと、フィース選手の強烈な一撃が炸裂した〜〜！！』
「野郎・・・やりやがったな！」
何度も斬りかかるマルス。
しかし、フィースはその全てをかわしていた。
「ハッキリ言ってマルス、お前のような奴とは戦う価値すらない！」
「黙れぇぇ！！」
「あれが、あのフィースさん・・・」
リアは初めて見るフィースに、驚きを隠せずにいた。
動きもそうだが、何よりもフィースが怒りを露にしている事に。
「そろそろ終わらせてやる！マグナムブレイク！」
（ドゴォォォ）
「ぐぁぁ！」
フィースのマグナムブレイクの爆風で、マルスの身体は高く飛ばされた。
だが、フィースの攻撃は続いた。
「これで終わりだ！ボーリングバッシュ！！」
「ぐぁぁぁ！」
『決まったぁぁぁ！！フィース選手、追撃のボーリングバッシュで勝負を決めた〜〜！！
リア選手・フィース選手、決勝進出！！』
「やりましたね、フィースさん！」
「ああ、これで決勝進出だ」
「負けました、リアさん、フィースさん・・・」
「ウォーラさん・・・」
「私は秘密裏で奴を追っている者です。
ですが奴の力は思いの他強く、奴が弱るまで、
ずっと待たなければなりませんでした」
「そうだったんですか・・・でももう安心していいですよ」
「僕がやっつけたやったからね」
「はい、ありがとうございます。
これからあの男を連行して、警備団に全てお話するつもりです」
「（ちくしょう・・・あの野郎、絶対に許さねぇ！！）
くたばりやがれ！グリムトゥース！！」
（ガガガガ！！）
『ああっ！！マルス選手、戦いが終わったスキをついて攻撃だ〜〜〜！！』
「しまった！まだ動けたのか！（避けきれない・・・！）」
「危ない！！」
（ドンッ！・・・ガガガガガ！！）
「きゃああああ！！」
フィースにマルスの牙が食らいつこうかとしたその時、
リアがフィースを突き飛ばし、自らが犠牲になった。
「リア！！」「リアさん！」
「チッ、外したか！だが覚えていやがれ！この次は・・・！」
しかし、マルスの逃走が成功する事はなかった。
「ハンマ〜フォ〜ル〜〜！！」
（ズキュゥゥゥ・・・）
「ぐぁ・・・な、何しやが・・・」
「ハンマ〜フォ〜ル、ハンマ〜フォ〜ル、ハンマ〜フォ〜ル〜〜〜！！！」
「ぐぇ・・・」
（バタッ）
「フィースちゃん、リアちゃん、助けにきたよ〜〜」
レミアのハンマーフォールによって、気絶させられたからだ。
「レミアさん！どうして・・・」
「カーネルちゃんに言われて、ここに来たの〜。
それよりも、リアちゃんを医務室に」
「はい、わかりました」
フィースはリアを背負い、医務室に向かった。
その後マルスは捕らえられ、牢に入れられる事となった。
「こいつはちょっとひどいねぇ・・・これじゃあヒールをかけ続けても、
決勝までに足が治るかどうか・・・」
「足以外はまだ治るけど、足だけは・・・」
医務室の、人の良さそうな中年の男性と女性が話す。
「このまま戦わせてあげたいけど、この分だと決勝は無理かもしれないよ・・・」
「つらいかもしれないけど、今回は・・・」
「そんな・・・せっかくここまで来たのに・・・先生、どうにかならないんですか！？」
「リア・・・君が辛いのはわかる。僕だって辛いんだ。
だけど、このまま君の足がダメになってしまうくらいなら・・・」
「私は諦めません・・・何があっても優勝するんです！」
「リア！どうしてそこまで無茶をしようとするんだ！エリーヌさん達との戦いなら、
二人に頼めば大会が終わった後でも戦えるじゃないか！」
「私は、フィースさんに恩返しがしたいんです！」
「！」
リアは強い口調で話した。
「最初は、私と戦ってみたいという、
エリーヌさんの願いに答えるために戦ってきました。
でも今はそれよりも、私のためにパートナーになってくださったフィースさんのために戦いたいんです！」
「リア・・・」
「フィースさんは見ず知らずの私を、いろいろサポートしてくれました。
私が不安でいる時、フィースさんが支えてくれました。
私の料理を、おいしいと言ってくれました・・・。
だから、私はフィースさんのために優勝したいんです！」
その時、ドアをノックする音がし、
エリーヌとルースが医務室に入ってきた。
「失礼します。話は聞いたわ、リア」
「先生、次の試合は私達の試合です。出来る限り時間を稼ぐので、
その間リア君の治療をお願いします」
「「エリーヌさん、ルースさん！」」
「私達は構わないが、君達はいいのかい？
決勝で戦うかもしれないんだよ？」
「リアは私達の妹のような存在です。
その妹の気持ちを、無駄にしたくありません」
「このまま決勝に進んで不戦勝では、私達も虚しいですからね」
「むぅ・・・わかった。どれだけ治るかわからないが、
やれるだけの事はやってみよう」
【まもなく、準決勝第二試合を開始いたします。
選手・パートナーの方は、フィールドにお集まりください。
繰り返します・・・】
「もうそんな時間に・・・それじゃあリア、行ってくるわ。
なるべく時間を稼いで、決勝に進むから」
「はい、頑張ってください！」
「応援に行けないのが辛いですけど・・・」
「心配無用だよ、フィース君。私達は必ず勝つ。
力を抑えた分は、君達との戦いで使うようにするよ」
エリーヌとルースは医務室を出て、フィールドへと向かった。
「では始めるよ。先に言っておくが、完全には治らないよ」
「だけど、あたしたちは精一杯頑張るから、あんた達も頑張りなさい？」
「はい・・・よろしくお願いします」
そして準決勝第二試合が開始された。
本来ならば楽に勝てる相手だが、リアの怪我の回復を考えると、
時間稼ぎのために力を抑えるなりしなければならなかった。
『おっと、前大会優勝のエリーヌ選手、動きにキレがないぞ？
度重なる激闘で疲労が重なったか〜！？』
「時間稼ぎだな」
「だろうな・・・それほどリアの怪我がひどいって事か。
マスターのヒールならすぐに治るってのに・・・」
「だが、大会規約に関係者以外の選手への支援は禁止されているからな」
「ったく、回復ぐらい許可しろってんだ・・・ありゃ、姉貴はどこ行った？」
「エリスなら、レミアを探しに行くと言っていたぞ」
「また道に迷ってんのか、レミ姉・・・」
「（力を抑えて時間を稼ぐことがこんなにも辛いなんて・・・。
でもリアの痛みにくらべれば、これくらい！）」
これまで時間を稼いできたエリーヌだったが、お互いにもう限界がきていた。
「もう終わらせないと、相手の方にも悪いわね・・・チャージアロー！！」
（バスッ）
『決まった〜！！体調を崩したのか、終始動きにキレがなかったエリーヌ選手、
最後にチャージアローで勝負を決めた〜〜！』
「ふう・・・」
「お疲れ様でした、エリーヌさん」
「いろいろと、辛いものでしたね・・・ルースさん、よろしいですか？」
「勿論ですとも。できるだけ万全な状態で、あの二人と戦いたいですからね」
【続けて、二本目を開始します。パートナーの方は・・・】
「では、行くとしますか・・・」
「レミア、どこにいるの？」
「ここだよ〜・・・」
「あら、そんな所に・・・って何、その大量のお菓子は！！」
「フィースちゃんとリアちゃんのお見舞いなんだけど・・・エリスちゃんもどう？」
「あのねぇ・・・決勝を控えている選手にそんなもの持ち込まないの！
さあ、早く観客席に戻るわよ？」
「え〜っ、せっかく買ったのに〜・・・」
「どうせなら、今日の晩に渡しなさいよ」
「どうして？」
「リアの歓迎パーティーと、優勝おめでとうパーティーをするんでしょ？」
「あ〜、そうだったね〜。じゃあ、もっと一杯買ってこないと・・・」
（ガシッ）
「待・ち・な・さ・い！観客席に戻るって言ったでしょ！」
「ふえ〜ん、エリスちゃん怖いよ〜・・・」
エリスとレミアが観客席に戻った頃には、準決勝が終わっていた。
「ん、戻ったか。たった今、準決勝が終わった所だ」
「あちゃー、終わっちゃったのね・・・それで、決勝の相手は？」
「あのエリーヌとルースというペアだ。厳しい所だな・・・」
「ん〜、準決勝が終わったようだね・・・やはり完全には治せなかったよ・・・」
「ですが、大分楽になりました。ありがとうございます」
「そう言ってくれると嬉しいねぇ。あ、そうだ。このお守りを持っていきなよ。
担げるゲンは担がないとね。あと、テーピングもしておいてあげるよ」
「ありがとうございます、先生」
「いいんだよ。君達が精一杯頑張ってくれれば、それがお礼にになるのさ」
「それじゃあ、行こうか、リア」
「はい、フィースさん・・・」
そして、決勝戦が始まろうとしていた。
『さあ、アーチャー・ハンター選手権大会アーチャー部門も、いよいよ決勝！！
組合せは、初出場で予選から素晴らしい戦いを繰り広げたリア選手・フィース選手のペアと、
前大会優勝者のエリーヌ選手・ルース選手のペアという、
まさに歴代屈指に残るカードだーーー！！！』
「来たわね・・・リア」
「エリーヌさん、私の回復のために、ありがとうございました。
ですが、だからと言って手加減はいたしません」
「わかっているわ。今のあなたに手加減なんてしたら、
あっという間にやられてしまうから。
全力で行くわよ、リア」
「はい！」
【それでは、決勝戦を開始します。パートナーの方は前へ】
「ようやくまともに戦える時がきたね、フィース君。
さすがにもう、時間稼ぎはしてあげないし、させないよ」
「わかっていますよ。リアなら、全力で戦ってくれって言ってくれると思ってますから」
【それでは決勝戦一本目を開始します・・・レディー、ゴー！】
「はぁぁぁ！！」
『お〜っと、ルース選手がいきなり仕掛けた！！
対するフィース選手は・・・な、なんと剣を降ろしたままだ！』
「マグナムブレイク！」
「ボーリングバッシュ！！」
（ギィィィン・・・）
ルースは開始直後、一気に詰め寄り、マグナムブレイクを繰り出し、
フィースは降ろしていた剣を一気に振り上げ、ボーリングバッシュを放った。
結果、ルースは吹き飛ばされた。
その後、凄まじい剣撃が続いた。
「何て重い・・・これが君の全力か・・・！」
「何かタイミングがずらされるなぁ・・・さて、どうするかな・・・」
「スキあり！！」
『あ〜っと、ルース選手、フィース選手のスキを突いた！』
「ルースさん、それは罠・・・！」
とっさにエリーヌが声をかけるが、時すでに遅し。
「ていっ！！」
（ガシィィィン！）
フィースのオートカウンターが決まり、
ルースの体勢が崩れた。
「くっ、体勢が・・・！」
ルースは体勢を立て直そうとしたが、
その前にフィースが剣を突きつけた。
「チェックメイトってとこですかね」
「・・・そのようだね。私の負けだよ」
『なんと、決勝戦一本目は、
ルース選手のギブアップでフィース選手が勝ち抜いた〜〜！！』
「すいません、あのままやっても勝てる気がしなかったんで・・・」
「そうですね・・・でも、賢明な判断ですね。
ルースさんが思いきり戦えたのなら、私はそれでいいんです」
「ありがとうございます。では、後は任せます」
「わかりました。（リア・・・いよいよね。どんな戦闘方式になっても、勝たせてもらうわよ）」
「やりましたね、フィースさん！」
「ああ。・・・ところでリア」
「はい」
「この大会が終わったら、伝えたい事があるんだ。
聞いてくれるかな？」
「・・・はい。私はフィースさんが伝えたい事、なんとなくわかる気がします。
それに対する答えも、できています。
私も、同じように伝えたいと思っていますから」
「そうか・・・それじゃあ、頑張るんだよ」
「はい！」
『さあ、いよいよアーチャー部門も大詰め！
これが最後の戦いとなるか！？
二本目は・・・スーパーターゲットヒットバトルだーー！！』
「げっ！あれかよ・・・キッツイねぇ・・・」
「そういえば、お前ですらもうやりたくないと言っていたな」
「ああ。よほどの集中力と反応速度が無いとまず当たんねえ。
ターゲットがランダムに出現するからな。
それに障害物もあって足使わなきゃ取れねえのがあるから、
怪我なんかしてるともっとキツイぜ」
「リアが圧倒的に不利という事か・・・」
『時間内に同点だった場合は、サドンデスに突入するぞ！
もしリア選手が勝てば、リア選手・フィース選手の優勝が決まり、
エリーヌ選手が勝てば、最後の戦いとして、何も無いリングの上での決戦となるぞ！！』
「（今のリアに長期戦は無理だ・・・）リア！これで決めよう！」
「わかりました！」
『それでは・・・二本目開始だぁぁぁ！！！』
（ヴンッ）
ターゲットが出現する。
リアとエリーヌはすぐに反応し、同時に矢を放ったが、
ターゲットは消えてしまい、外れた矢が当たる音だけが聞こえた。
「ターゲットが・・・集中力と反応速度が高くないと、
ターゲットを視認してもすぐに消えてしまうというわけですね・・・それなら！」
『あ〜っと、リア選手、弓を構えたまま目を閉じた〜！』
「リア・・・あれは予選の時の・・・」
「（この戦いに勝つには、これしかありません・・・）」
そしてターゲットが現れた。
「そこっ！」
リアは目を開き、ターゲットのある方向に振り向き、矢を放った。
そしてそれはターゲットを貫いた。
「まずは一つ・・・！」
『先にターゲットを取ったのは、リア選手だ〜！』
「やるわね、リア。・・・私も負けてられないわ」
（ヴン、ヴン）
「（ターゲットが二つも・・・一つだけでも取らなくては！）」
（バシュッ）
リアは近くのターゲットに矢を放つ。
しかし、エリーヌの矢が一瞬早くターゲットを射抜いた。
しかもエリーヌはそれだけでなく、もう一つのターゲットを射抜いていた。
「集中力と反応速度なら、私も負けないわよ、リア」
「エリーヌさん・・・望むところです！」
その後数分間、取ったら取られ、取られたら取り返すが連続で続いた。
集中力を高め、なおかつ動きつつ矢を放っているため、
精神力に疲労が溜まる事となる。
しかし、リアの場合は、それの他に足の怪我というものがある。
時間が経つにつれ、痛みを感じるようになり、
集中力が途切れがちになるのは当然の事となってしまう。
そして、その時が訪れてしまった。
（ヴン）
「そこ！・・・痛っ！！」
（ドサッ・・・）
「リア！！」
『あ〜っと、リア選手が障害物につまづき、倒れてしまった〜〜！！
そして足を庇っている・・・これは準決勝終了直後に受けた怪我の影響か〜！？
しかし、無常にも時間は過ぎていく〜！！』
「く、とうとう怪我の影響がでてきたのか・・・」
「しかも倒れ方がまずかった。あれでは、立ち上がる事すら困難だ・・・」
「ちくしょう！俺達には何もできないのかよ！」
「落ち着けウェイン！今のリアは立ち上がれない・・・だが、
一人だけ立ち上がらせる事のできる者がいる。
それもすぐ近くにな。リアと同様に、そいつの事を信じるんだ」
「マスター・・・わかった、信じてやるぜ、あいつを！」
「リア・・・とうとう怪我の影響が出てきてしまったのね・・・。
でも私は手加減は一切しない。」
しかしその言葉とは裏腹に、エリーヌは複雑な表情をしていた。
「リア君の事が心配で堪らなく、今すぐにでも駆け寄りたい気持ちと、
決勝で手加減はしないという誓い・・・こんなに辛い事があるとは・・・」
その間にも、ターゲットは大量に出現し、エリーヌが射抜いていく。
「早く・・・早く立たないと・・・駄目、足が・・・！
私は、こんな事で終わってしまうの・・・」
「諦めちゃ駄目だ、リア！」
「フィースさん・・・」
「最後まで諦めちゃいけない！
リア、自分の力を信じるんだ！」
「フィースさん・・・わかりました！私、もう諦めません！」
「（そうです・・・諦めないと言った私が、ここで諦めるわけにはいきません！）」
『お〜っと、リア選手立ち上がった〜〜〜！！！
これには観客席からも大拍手が撒き起こった〜！！』
「あの怪我で立った・・・！？
一体、リアのどこにそんな力が・・・いけない、今は集中しないと！」
「アローシャワー！！ダブルストレイフィング！！」
『な、なんと、立ち上がったリア選手、大量のターゲットを一気に射抜いた〜〜〜！！
凄まじい勢いで、次々とターゲットを射抜いていく〜〜！！
しかし、残り時間は少なくなってきた！
エリーヌ選手、逃げきってタイマンに持ち込めるか！？
それともリア選手が大逆転を見せるか！！？』
「これが・・・リアの本当の力なの・・・？」
「・・・目の前が霞んで・・・意識が薄れて・・・お願い、最後まで持って！」
（ヴォン）
ターゲットが出現する。
二人はすぐに理解した。それが最後のターゲットである事。
それを取った者が勝者という事を。
「渡さないわ！」
「これで・・・決めます！」
（シュッ・・・）
「お願い・・・先に・・・」
紙一重の差。その差を制したのは、リアの放った矢だった。
そしてリアは意識を失い、その場に倒れた。
『決まった〜〜〜！！リア選手、最後のターゲットを取り、
３１１点対３０９点でリア選手の勝利、優勝が決定した〜〜〜！！！！』
「「「リア（君）！！」」」
フィース、エリーヌ、ルースは、リアに駆け寄った。
「リア、しっかりして！あなたの優勝よ？」
「・・・大丈夫です。気を失っているだけです。
高い集中力の維持と怪我の痛みで、もう精神が限界だったんでしょう。
しばらく休めば、目を覚ますと思います」
「そうですか・・・リア、見せてもらったわ。あなたの本当の力を」
「素晴らしかったよ、リア君。後はゆっくり休んで、怪我を完治させよう」
「それじゃあ、僕はリアを医務室に連れて行きます」
「あ、フィースさん、表彰式と閉会式はどうなさるんですか？」
「そんな事より、リアの事が一番大事ですよ。
それじゃ、後は頼みます」
「ふう・・・そう言うと思ったよ。行ってくるんだ、フィース君。
リア君の傍にいてやってくれ」
「はい」
『お、おっと、フィース選手、倒れたリア選手を背負い、
どこへ行くんだ〜？』
「では、私達も行くか。戦いが終わった後なら、
関係者以外の回復や支援も受けられるだろう」
「そうだな。みんなより先に歓迎するってのも悪くねえしな」
「みんな今頃、パーティーの準備をしている頃ね」
「お腹空いちゃった〜・・・」
「おいおい、レミ姉ずっと菓子食・・・って、マジかよ！
レミ姉の大量の菓子が無くなってやがる・・・！！」
「ふむ・・・これでいいだろう。だが、よほど疲れたのか、まだ目を覚まさないな」
「おぉ・・・これは凄いヒールだ・・・あの怪我が短時間で治るとは・・・」
「いえ、先生達の処置が良かったからこそ、こんなに早く治せたのです」
「ありがとう、マスター」
「気にするな、フィース。私達の新しい仲間となる者に、
これくらいはしてやらないとな」
「それじゃ、俺達はそろそり行こうぜ？
パーティーの準備の手伝いをしなきゃな」
「え〜、もうちょっといようよう〜〜」
「駄目よ。レミアもきなさい」
「わ〜ん・・・」
医務室から出るカーネル、ウェイン、エリスと、
エリスに引きづられているレミア。
「では、我々もそろそろ出るとしよう」
「あんたたち、元気でね？」
「はい。いろいろとお世話になりました」
そして、入れ替わるように、エリーヌが入ってきた。
その手にはいろいろな物が抱えられている。
「失礼します。フィースさん、リアの様子はどうですか？」
「はい。マスターが怪我を治してくれたんですけど、リアはまだ眠っています」
「そうですか・・・今ルースさんを待たせてるので、手短に。
これ、優勝トロフィーと賞金と、優勝賞品の弓です」
「あ、どうもすいません。やっぱり、表彰式に出なかったのはまずかったですかね？」
「そんな事ないですよ。フィースさんは自分のした事に後悔はしていないのでしょう？」
「はい。リアの傍にいたかったので」
「ふふ、それはどうしてですか？」
エリーヌは、理由はわかっているがわざとからかうように言ってきた。
「それは・・・リアが好きだからですよ。
好きな子の傍にいれるなら、僕は表彰式に出なくても後悔しません」
「そうですか・・・では、そろそろ失礼いたします。
フィースさん、リアの事をよろしくお願いします。
本当の妹のようにかわいい、リアの事を」
「わかりました。それでは、お元気で」
「はい」
そしてエリーヌも医務室を出ていき、
医務室にはフィースとリアの二人だけとなった。
「リア、もう起きてるよね？」
「え・・・気付いてたんですか？」
「うん。エリーヌさんが医務室に入ってきたあたりだよね」
「はい・・・あ、あの、フィースさん、私・・・」
「返事、聞かせてくれるかな？」
フィースは少し照れくさそうに言った。
そしてリアも、はにかんだ顔で口を開いた。
「はい。私も・・・好きです・・・フィースさんの事が大好きです。
私と、付き合ってください・・・」
「ああ。よろしく、リア」
「・・・フィースさん、少し目を瞑ってもらえますか？」
「ん？別にいいけど・・・こう？」
「はい。少しそのままで・・・ん」
リアは少し起き上がってフィースの首後ろに手を回し、
自らの顔を近付け、そしてフィースの唇と自分の唇を重ねた。
「・・・ちょっと恥ずかしかったです」
「ふふ、これからもよろしく、リア」
今度はフィースが軽く唇を重ねる。
「それじゃあ行こうか。みんな待ってるよ」
「はい！」
二人はＥｔｅｒｎａｌ Ｗｉｎｇｓの住処へと向かった。
その際、今回の事を話し合ったりしていた。
「フィースさん、もしもの事って、考えた事がありますか？」
「もしもの事？」
「はい。もしフィースさんが私に声をかけなかったら、
もし私がアーチャーでなかったら、私達は出会っていなかったかもしれません・・・」
「うーん・・・確かに、そんな可能性もあったかもしれないね。でも・・・」
「でも・・・？」
「たとえあの時に出会っていなかったとしても、
僕達は必ずどこかで出会い、こうして二人で歩いている・・・そんな気がするんだ」
「フィースさん・・・そうですね。私も、そんな気がします。
私達は必ずどこかで出会って・・・そしてこんな風に歩く
・・・。
すいませんフィースさん、変な事を聞いてしまって。
私、こんな幸せは生まれて初めてで、少し不安になったんです」
「そうだったんだ・・・でも大丈夫だよ。
みんなと一緒にいれば、絶対に幸せになれるから。僕が保障する」
「はい」
そして二人は、Ｅｔｅｒｎａｌ Ｗｉｎｇｓの住処へとたどり着いた。
「・・・緊張してきました」
「そういえばリアは初めて来たんだよね。まあ、そんなに緊張しなくても大丈夫」
「は、はい・・・」
リアは恐る恐るドアを開けた。
その瞬間、クラッカーが鳴り響いた。
「きゃっ！」
目の前を見てみると、豪勢な料理と、
『リア、優勝おめでとう！そしてようこそ、Ｅｔｅｒｎａｌ Ｗｉｎｇｓへ！』
という横断幕が掲げられていた。
「ようこそ、Ｅｔｅｒｎａｌ Ｗｉｎｇｓへ。改めて自己紹介を。
私はこのギルドのマスター、カーネルだ。これからよろしく」
「は、はい・・・」
「へ〜、この子が噂のリアって子か。フィースもすみにおけないな〜」
「ねえねえ、今度お買物に行きましょうよ！
おいしいケーキが食べれるお店を教えてあげる！」
「・・・よろしく頼む」
「・・・（よろしくお願いします！）」
「ほっほっほ、リアとやら、病気になったら、ワシが薬を調合してやるから安心せえ」
「おいジジイ、リアに怪しいもん飲ませるんじゃねえぞ！」
「なんじゃと、ウェイン！ワシがいつ怪しいもんを作ったと・・・」
その他、大勢のメンバー達がリアと挨拶を交わし、
フィースとリアは、一番注目される奥の席へと座った。
「どうだい、リア？」
「はい。とても温かくて、何だか懐かしい感じがします。まるで家族みたいに・・・」
「そう。これからは、君も家族の一員なんだ。よろしく、リア」
「はい！フィースさん、これからもよろしくお願いします！」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「パパとママの出会ってから大会終了までの話、どうだった？」
「うん！パパもママも、と〜ってもカッコよかったんだね♪」
「まあ、フィリアったら・・・ではフィースさん、
これから夕食を作ってきます」
「うん、いってらっしゃい」
「あ、ママ」
リアがキッチンに向かおうとしていたその時、
フィリアはリアを呼び止めた。
「どうしたの？何か作ってほしいものでもあるの？」
「ううん、違うの。
ママがお買物から帰ってきた時に言ってた、良い事ってなーに？」
リアは少し考え、口を開いた。
「そうねぇ・・・じゃあ、教えてあげる。
フィリア、あと八ヶ月もしたらお姉ちゃんになるのよ？」
「「え？」」
二人は同時に声をあげた。
「リア、それって・・・」
「はい。私達の二人目の子供です♪
今日、お医者さまの所にいって診てもらったんです。
男の子か女の子かは、まだわかりませんけど・・・」
「やったね、リア！それじゃあ、今から良い名前を考えないとね」
「私も手伝う〜！」
「私もお手伝いします。でも、先に夕食を食べてからにしましょう？」
フィースと、彼の永遠のパートナーであるリア。
運命的な出会いを果たし、絆を深め、結ばれた二人。
そしてその二人の間に生まれた、フィリア。
二人が出会ってから十数年、彼らはフィリアの希望で、
二人が出会った場所へと赴いた。
「パパ、ママ、頑張ってね！」
「ありがとう、フィリア。ママ達、絶対に優勝するから」
「だから、応援は頼んだよ」
「うん！！」
二人はあの日の想いを胸に、懐かしき場所へと足を踏み入れた。
そして空はあの日と同じように、青空が広がっていた・・・。
〜永遠のパートナー 終了〜
おまけ（リア加入後のとある晴れた日）
「そういえばリアってすっごい料理が上手で、レパートリーも多いよね。
誰か知り合いに凄いコックさんでもいるのかい？」
「いえ、いませんけど・・・ただ、一度食べた料理で、
『ここをこうすればもっとおいしくなるでしょうか』と自分で同じ料理を作る時、
通常の材料にいろいろ隠し味を入れて、それがうまくいくんです。
ちょっと自慢なんですよ」
「そうなんだ。・・・あれ？『一度食べた料理で』、『同じ料理を作る時』って・・・」
「はい。私、一度食べた料理の食材やレシピ、隠し味が全部わかるんです。
これもちょっと自慢です」
「す、凄いね。そういえば５年前に世界一のコックが一人の女の子に負けて、
修行の旅に出たって話が有名になったよね。
その時のコックが、『女の子に一度食べさせただけで隠し味がバレたどころか、
私の作った料理を超える味の料理を作られてしまった』
って嘆いてたとか。
名前だけでショックが蘇ってくるから言わないでくれってコックが言ってたから、
その女の子の名前がわからなかったんだけど・・・まさか・・・」
「お恥ずかしながら・・・その女の子は私です・・・」
そして沈黙の時間が少し流れた。
「・・・リア」
「はい・・・」
「風が気持ちいいね・・・」
「そうですね・・・」
詳細：
５年前、リアのいた学校に世界一のコックがやってくる。
↓
リア、そのコックの料理を食べる。
その際、食材やレシピ、隠し味を全て言い当てる。
↓
そしてリア、見た目が同じ料理をコックよりも短時間で作る。
↓
コック、食べる。そして自分の料理より遥かに味が勝っていると悟る。
↓
コック、そして旅へ・・・。
そして修行の旅から帰ってきたコックが、
リアに（一方的な）対決を挑み、返り討ちにあったのはまた別の話・・・。
〜今度こそ終わり〜
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
・・・長いね、うん（ぉ
仮にフィリアが出てきている部分を除いたとしても、
大して変わらない長さってのは・・・。
これでもセリフ間を詰めました。詰めてこれだけです。
今までのように空けてたらどんな悲惨な事になったか（ぉ
大会用のコテージ：
耐震・耐火・耐水性に優れている。
実は希望者がいれば買い取れる。当然、使用中は買い取れない。
風呂場は男湯と女湯に分かれている。
ちなみにフィース・ルース、リア・エリーヌは時間をずらして風呂に入った（本編での会話のため）。
一番の特徴は、新鮮な食材を新鮮な状態で長期間保存できる食糧庫がある事。
生物ですら例外ではない（ぉ
プロンテラ盗賊団：
過去にＥｔｅｒｎａｌ Ｗｉｎｇｓによって壊滅させられた世界最大の盗賊団。
親玉のバンデルは壊滅直前、
自らの誇りのためフィースと戦って敗北し、牢に入れられた。
リア：
自然現象の雷が大の苦手。
本人も覚えていないほど小さな頃、
雷の光と音が怖かったのか、苦手になった。
リアの料理：
同じ物を毎日食べても飽きないほど。
常に愛情を注いで作っている。フィースやフィリアには特に愛情を注いでいるが、
とても恥ずかしいらしく、口には出していない。
レミア：
フィース達の仲間で、エリスの親友の製造型ＢＳ。
彼女も両親も天然系で、いるだけでその場が和むという良い例。
いつも間延びした声で話すが、
製造時には何故か普通のテンポで喋る（性格は変わらない）。
製造の腕は世界でも１、２を争うほどで、
彼女が作った武器は簡単に売り切れてしまう。
だからといって製造の手を抜く事は全く無く、
一品一品、「自分の作った武器がみんなの役に立ってくれますように」と心を込めて丁寧に造っている。
趣味は製造と露店販売（趣味か？）。
ケタ外れともいえる資金を持っており、
メンバー全員分の最上級装備やレア装備を買っても十分に余るほど。
彼女の物欲の無さで自然とそうなっている。
マスターの本名：
カーネル。間違っても某ケン○ッキーの某オッサンではない。
エリーヌ：
リアの先輩で、リアが尊敬している女性。
ダンサーになる前にリアと戦ってみたいという理由で大会に出場し、
最後まで諦めないというリアの精神力の前に惜しくも準優勝となるが、
本人はリアの力を見れたと満足している。
当初の設定ではお○夫人のような感じだったが、何となくヤヴァイ気がして変更。
ルース：
エリーヌのパートナーの騎士。
かなりの腕だが、フィースには及ばなかった。
ギルドＥｔｅｒｎａｌ Ｗｉｎｇｓ（ＥＷ）：
エリスの言うように、中には少々変わった人がいる。
モンスターの方から懐かれた者や、
普段無口で恥ずかしがりやで買物に行く時はいつもクローキングしているアサシンやら。
某有間でコンフーな方にそっくりなモンクもいたりする（マテ
余裕で砦を取れたりするが、自由度が無いという理由で現在の住処に。
ＥＷの住処：
小さな豪邸という感じ。昔からある建物で、何度かリフォームされている。
メンバーの部屋の他に射撃場、製造室など、一部メンバーに合わせた部屋もある。
マバル：
アルケミストで、エリスが言っていた変な人の一人。
確実に１００歳を越えているが、実年齢は本人しか知らないため、
２００歳を越えてるとかＥＷ結成当時（歴史は長かったりする）からいるんじゃないかとか、
１０００年前からいるんじゃないか、といった噂がある。
何らかの形で彼の実年齢を知った者は、
（この世の物とは思えない見た目と味がする）不思議な薬を飲まされ、
その時の（実年齢に関する）記憶を消されているらしい・・・。
いろいろと謎の多いお爺さんだが、ＥＷの良き相談役でもある。
いろいろな薬を調合できたりするが、特定の者には時々副作用が出たりする（どうもわざとらしい）。
機会があるならば、ＥＷのメンバーの日常を描きたいデス。