「パパー」

ある晴れた日。
フィースとリアの娘のフィリア（十歳）がフィースにかけよってきた。
リアは買い物に出ていて、今はいなかった。

「どうしたんだい？フィリア」

「あのね、パパとママが初めて出会った時のお話が聞きたい。
でもママ、今はお買い物に出てるから、パパからだけでも聞きたいの」

「うーん・・・もうちょっとしたらママが帰ってくるから、それまで待・・・」

「パパ・・・」

フィリアはジッと見つめている。

「・・・てないみたいだね。
じゃあ、ママが帰ってくるまで、パパがお話してあげるよ。
ママが帰ってきたら、一緒にね」
「やったー♪」




永遠のパートナー　前編





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

それは、今から十二年前の事だった。
今よりも少々静かではあったが、それでも盛大な賑わいをみせていた、
アーチャー・ハンター選手権大会。
アーチャー部門は観客が少なかったが、
フィースの親友・ウェインが三連覇をしてから、現在までの盛り上がりぶりになった。





そのアーチャー部門に観戦に来ていたフィースは、運命的な出会いを果たす事となる。





アーチャー部門初日。
フィース、ウェイン、エリス、マスターの四人は、
選手権特設会場に来ていた。
他のメンバーは、会場運営に関わったりと忙しくしている。

「あー、それにしても盛り上がってんなぁ・・・」

そうぼやくウェイン。
弓使いで彼の名を知らないものはいない。

「これもお前が両部門で大会史上初の三連覇をしてからだな。
しかも史上最年少での初優勝だからな」

それをからかうように言うマスター。
彼はウェインのパートナーを務めていた。

「あんまからかわないでくれよ。
マスターのサポートやみんなの応援があったから、
俺は思いっきり戦えたんだ」
「ふ・・・言ってくれるな。それにしてもフィース・・・」
「お前・・・よくそんなに食えるな？」

「ん？」

二人が振り返った先には、屋台で出された料理を、
もう何回食べたのかわからないフィースがいた。

「うん、屋台の食べ物っておいしくってさ」
「羨ましいわねぇ・・・太らない体質の人って」

エリスが羨ましそうに言う。

「そうだよなぁ・・・って姉貴もそういう体質じゃねえか」
「ま、そうだけどね。でもフィースの彼女になる人は大変ねぇ。
いっぱい食べるし、いつの間にかフィースのペースに呑まれていくだろうし」

「彼女・・・僕はそういう事を考えた事ないからなぁ・・・」
「まあ、お前ならすぐにでも良い人が見つかるだろう」

「そうかなあ・・・あ、それよりも早く席を取っておかないと」
「む。そうだったな。ウェイン、行ってきてくれ」
「はぁ？なんで俺が？」

ウェインは迷惑そうに、何で俺なんだよ、という顔をしている。

「頼む。お前だけが頼りなんだ」
「ウェインなら、必ずいい席を取ってくれるって期待してるんだから」
「よっしゃ！行ってくるぜ！！」

そういってウェインは走り去っていった。

「「単純だな（ね）」」

エリスとマスターの意見が合致した中、フィースは

「小包子おいしいなぁ・・・」

まだ食べていた。
そんな中、フィースの視線はある一点で止まった。

「あ・・・」

「どうした、フィース？」
「何か変なものでも入ってた？」

マスターとエリスが気にかける。

「あの子も、出場選手なのかな・・・？」
「ん・・・あの子か？」

フィースの視線を追った先には、ピンク色のショートヘアをした少女が立っていた。

「ああ。何か困っているみたいに見えるんだ・・・」

心配そうにしているフィースを見て、
エリスが口を開いた。

「行ってきなさい、フィース。
あなたの性格なら、放っておけないんでしょ？」

「うん。それじゃ、ちょっと行ってくる！」

フィースは少女の所に走っていった。

「またいつものやつか・・・困っている者を放っておけないという」
「それがフィースの良い所なんだけどね」
「あいつには随分助けられた。
それに自分の幸せよりも他人の幸せを優先するやつだからな。
もうフィースにも自分の幸せというものがあってもいいのだが・・・」
「あの子がフィースにとっての幸せになってくれれば、
それはそれで良いんだけど・・・それはあの子とフィースが決める事だしね」





「はぁ・・・どうしましょう・・・」

少女はため息をついた。

「私とした事が、パートナー制だって事を忘れてしまうなんて、迂闊でした・・・はぁ・・・」

もう一つため息。

「このままじゃ出場できませんし、エリーヌさんとも戦えない・・・」

「ねえ、君。どうしたんだい？」

少年が声をかける。それはフィースだった。
しかし、少女は悩みでフィースの声が聞こえていなかった。

「本当にどうしましょう・・・」

「おーい」
「きゃあっ！」

フィースの声に気付いた少女は、はっと我にかえり、
突然の出来事に驚きを隠せずにいた。

「ご、ごめん！驚かせるつもりは無かったんだけど・・・」

「い、いえ、お気になさらないでください。
考え事をしていた私が悪いんですから・・・」

「いや、僕が声をかけたから・・・それよりも、何か悩み事があるのかな？
ちょっと気になったから、声をかけてみたんだ」

「はい・・・」

「君さえよかったら、話してくれるかな。
もしかしたら、僕が力になれるかもしれない」

少し考えた後、少女はフィースを見つめ、
その理由を話した。

「そうか・・・パートナーがいないんだね・・・」
「はい・・・」

少女は落胆した。
この直後のフィースの言葉を読めずに。

「じゃあ、僕が君のパートナーになる！」

フィースは言った。
それは嘘ではなく、心からの言葉。

「はい・・・え、あの、今何とおっしゃりました・・・？」

「ん、声が小さかったかな・・・僕が君のパートナーになるよ」

「・・・えぇぇぇぇ！？え、えっと、あ、あなたが私のパートナーに！？」

突然の出来事にに、少女は先程の出来事よりも驚いた。

「うん。君さえよければね。それともダメかな？」

「い、いえ、私としては大変ありがたいのですが、
そ、それではあなたに、ご迷惑がかかってしまいます！」

「いいんだよ、気にしなくても。僕がそうしたいから言ってるんだ。
困っている人を放っておけないからね」

フィースは笑顔で話した。

「それに、一度大会を身近で見てみたかったんだ。
観客席から見るのと身近で見るのとだと、全然違うだろうし」

「そ、そうなんですか・・・では、私からお願いさせてもらいます。
どうか、アーチャー・ハンター選手権大会、
アーチャー部門の・・・私のパートナーになってください」

「了解。僕は君のパートナーになる事をここに誓います。
よし、それじゃあ、優勝を目指して頑張ろう！」

「は、はい！」

二人は誓いの握手を交わした。



「あ！大事な事を忘れた！！」

「きゃっ！い、一体どうなさったんですか？」

「よく考えたら、お互いに自己紹介してなかったよね？」

「そ、そういえば・・・そうでしたね・・・」

「じゃあ、僕から。僕の名前はフィース。
見ての通りの騎士さ。君の名前は、どんな名前なんだい？」



「はい。私の名前は、リアと申します。
よろしくお願いします、フィースさん」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「これが、パパとママの初めての出会いなんだよ、フィリア」

「うわ〜・・・パパって初めてあった時から積極的だったんだね。
でもパパ、かっこいい〜♪」
「ありがとう、フィリア」
「それで、大会の方はどんな感じだったの？」
「うん、それはね・・・」

（ガチャッ）
その時、ドアが開く音がした。

「ただいま戻りましたー」

「おかえり、リア」
「あ、ママおかえりー♪」

フィリアはリアに駆け寄り、抱きついた。

「あら、どうしたのフィリア？何か嬉しい事でもあったの？」
「うん！あのね、パパがね、ママと初めてあった時の事を話してくれたの！」
「まあ、そうなの。よかったわね」

「リアも一緒にどうだい？丁度大会の初日の話をする所なんだけど」

「はい、ぜひご一緒させてください。
この荷物を片付けましたら、すぐに参りますので」

「うん、わかった。それにしても今日は荷物が多いね？」

「はい。良い事があったので、
フィースさんやフィリアにも喜んでもらおうと思って、
今日の晩御飯はご馳走をする事にしました」

「やったー♪」

「じゃあ、その良い事は話が終わった後に聞く事にするよ」

「はい」

リアは台所へと入っていき、
しばらくすると姿を見せた。

「お待たせしました」
「ママー、早く早く」
「ふふ、今行くから少し待ってね？」



リアはフィースの隣りにくっつくように座り、
フィリアはちょうど二人の間に座った。



「そこでいいのかい？」
「うん！パパとママとぴったり一緒♪」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「それじゃあ、受付に行こうか」

「はい」

マスターとエリスに事の成り行きを説明した後、
二人は大会参加のため、受付に向かった。

「ようこそいらっしゃいませ。大会参加希望者の方でしょうか？」

受付の女性が問いかけてくる。

「はい。アーチャー部門を、彼女と僕で」
「わかりました。では、ここにお名前をお書きください」

差し出された受付表にリア、フィースの順で名前を書き、
選手・パートナー登録を行った。

「選手・リア様、パートナー・フィース様・・・はい、選手・パートナー登録完了いたしました。
それでは開会式までの間、控え室にてお待ちくださいませ」

そして二人は控え室へと入っていった。
控え室には開会を待っている選手やパートナーで溢れていた。

「うわ・・・多いなぁ・・・」
「そうですね・・・ここまで多いなんて・・・」

二人は大会参加者達の雰囲気に、やや押され気味になった。

「あら、リアじゃない？」
「やあ、リア君」

その時、リアに向かって男性と女性が声をかけてきた。

「あ、エリーヌさん、ルースさん！お、おはようございます！」

リアは深々と頭を下げた。

「あらあら、そんなに下げなくてもいいのよ？」

女性は苦笑した。

「は、はい・・・」

「あら・・・？リア、こちらの方はパートナーなの？」

「はい、フィースさんという方です。
パートナーがいなくて困っていた所を、パートナーになってくださったんです」

「それは・・・今日初めて会った、という事に？」

リアの言葉に、エリーヌは不思議そうな顔をした。

「はい、そうですけど・・・どうかしましたか？」

「い、いえ、気にしなくていいわ。
では、自己紹介といきましょう」

「初めまして。フィースと申します。
確か貴方は前大会で優勝した・・・」

「あら、私の事をご存知とは光栄です。
初めまして。私はエリーヌという者です。
アーチャーで、リアの姉のような存在というところです。
こちらは・・・」
「ルースです。よろしく、フィースさん」

フィースは、エリーヌ、ルースと握手を交わした。

「ん・・・かなりの実力をお持ちのようで」

ルースが感嘆の声をあげる。

「そんな、大した事ないですよ」

「あらあら、ご謙遜を。でもそういう所、リアと似ていらっしゃいますね。
リアは実力はあるのに、自信が無いのか、引き出せずにいるんです」

「そんな、私の実力なんて・・・」

「わかります。リアはまだまだ伸びると。
この大会中に、彼女の本当の力を引き出して見せます」

「フィ、フィースさんまで・・・」

「リア、大丈夫だから。僕は君を信じている。
だから、君も僕を信じてくれないかな？」

フィースは笑顔で語りかけた。

「はい・・・わかりました。私、フィースさんを信じます！」

リアはフィースの言葉に答えた。

「それでは、また大会で会いましょう」
「君達と戦える時を待っているよ」

エリーヌとルースは、奥の方へと消えていった。


「ルースさん、珍しい事もありますね」
「リア君の事ですか？」
「ええ。リアは、フィースさんという方をもうすでに信頼していらっしゃいます。
リアが初めて会った人をあんなに信頼しているなんて、
今までにはありませんでした」
「我々でさえ、打ち解けるのに少しばかり時間がかかりましたからね」
「それに、あの方は人を見る目があります。
リアの力を見抜いていましたし・・・」
「この大会、楽しみになりましたね」
「ええ」



【まもなく、アーチャー・ハンター選手権大会アーチャー部門の開会式を執り行います。





出場選手及びパートナーの方は、会場内のフィールドにお集まりください】



「じゃあ、行こうか」

「はい」

そして、開会式が始まった。
大会委員長や国王トリスタン三世の挨拶が終わった後、
エリーヌによる選手宣誓が行われた。

「宣誓！我々選手一同は、日頃の修練の成果をいかん無く発揮し、
そして、信頼できるパートナーと共に、正々堂々と、
己の持てる力を全て出し切って戦う事をここに誓います！」

そして拍手が撒き起こり、開会式が終わりを告げた。


一方、観客席では・・・

「ったくフィースのやつ、どこに行ったんだよ・・・開会式が終わっちまったぞ？」

開会式になっても、姿を見せなかったフィースにいらだつウェイン。

「ん？フィースならいるだろう」

「はぁ？いねえじゃん」

「誰がここだって言ったのよ。
フィースはあそこよ」

そういってエリスはフィールドに向かって指を指した。
その方角を目で追っていくウェイン。
やがて、彼はフィースの姿をその目に捉えた。

「・・・ああっ！あいつ大会に出てやがんのか！！」

「そうよ。ああ、そういえばあんたは席を取ってたから知らなかったのね」

「フィースは、今隣りにいるリアという子が困っている所を発見してな」

「ああ、それでそのリアって子がパートナーがいないと困っていた所に、
フィースが心配して声をかけて、パートナーになったんだろ？」
「察しがいいな、ウェイン」
「長い付き合いなんだ。それくらいわかるってんだ」
「まあ、後で声をかけてあげましょう？
それがフィース達にとって最高の励ましになるんだから」
「そうだな・・・って、そういや席を四つ取ってたのに一つ余っちまったな」

「大丈夫〜〜、私が座ったから〜♪」

間延びした声。
フィース達の仲間、ブラックスミスのレミアがいた。

「レミ姉！一体いつから・・・って何だよその大量の菓子と飲み物は！？」
「さっき来たばっかりだよ〜ん。このお菓子はみんなの分〜」
「レミア、依頼されてた仕事は終わったの？」

親友のエリスが話しかける。

「終わったよ〜。はい、これエリスちゃんの好きなお菓子〜」

「あら、ありがと。んー、やっぱりおいしいわねぇ」

「ふ、わざわざ売店に行く手間が省けたな」
「ああ。いろいろあって迷っちまうからなぁ・・・」


【それでは、これより予選を行います。予選は一グループ三組のリーグ戦となり、
ターゲットヒット制となります。選手の組合せはランダムで・・・】


「・・・いきなり強い人と当たらなければ良いのですけど・・・」
「こればっかりは運が関わってくるからね。
でも誰が相手でも、精一杯やること。
そうすれば必ず良い結果が出てくるから」
「はい」

そして組合せが発表された。
リア（又はフィース）はクジ運が悪かったのか、

「前大会の準優勝者と、ベスト４・・・か・・・」
「そんな・・・」

『お〜っと、これはスゴイ事になったぞ〜〜！？
前大会の準優勝者マーク選手とベスト４のレイシア選手が同じグループだ〜〜〜！！』







という事になってしまった。



「リア、かわいそうに・・・」

エリーヌは心配そうに呟いた。

「リア君、いきなりあの二人とは厳しいですね・・・。
しかもターゲットヒット制は、あの二人が最も得意としている競技ですからね」

ルースも同様に心配していた。



「わ、私、どうすれば・・・「心配いらないよ、リア」・・・え？」

「さっきも言ったけど、相手が誰であろうと関係ない。
精一杯やれば必ず良い結果が出るから。
だから、怖がらずに思いっきりやればいいんだ」

「フィースさん・・・わかりました。私、力の限りを尽くします！」


そして予選は始まった。
マーク、レイシア、リアの順で行われ、
マーク、レイシアは同点で予選の結果を待つばかりとなった。

『何という事だ〜！マーク選手、レイシア選手が４７点で同点だ！
リア選手、これは苦しくなったか！？』



「・・・いよいよだね」
「はい」

「深呼吸して、気持ちを落ち着かせよう」
「すぅ・・・はぁ・・・」

「よし。頑張ってくるんだよ」
「はい！」

【それでは、リア選手の予選を行います】

「・・・」

リアは構えたまま目を閉じ、精神を集中させ、
カウントダウンを始めた。

「３・・・２・・・１・・・」
「リア・・・」

「０！」

そして目を開け、一投目の矢を放った。

（トスッ）

リアの弓から放たれた矢は、見事に的の中心に刺さっていた。

『でた〜〜〜！！１０点、いきなり１０点だ〜〜！』

アナウンスと同時に、大歓声が沸き起こった。
その後、リアは９点、１０点、９点という成績を叩き出し、
最後の一投を残す事となった。

『さあ、凄まじい集中力を見せるリア選手、
１０点を取ったならその場で予選通過が決定、９点ならサドンデス、
８点以下ならマーク選手とレイシア選手の一騎打ちとなります！！』



「リア」

「はい、何でしょう？」

リアが構えようとしたその時、フィースが声をかけた。

『あっと、パートナーであるフィース選手が、リア選手を呼びとめたぞ？
これはアドバイスなのか〜？」

「リア、これは僕の友達が大事な一投を射る際にいつもやっている願掛けなんだけどさ・・・」

そしてフィースはリアに耳打ちをした。

「・・・私にできるでしょうか？」
「大丈夫。あれだけの集中力があれば、必ず」
「はい。では、行ってきます」

『お、リア選手が再び立ち位置に戻ったぞ？
・・・おや？先ほどと少し構え方が変わっていないか？』


「（私は約束しました・・・必ず、エリーヌさんと戦うと。
ここで負けるわけにはいきません！）」

『さあ、リア選手最後の一投を、放ったぁぁぁ！！！』

（トスッ・・・）

最後の一投が命中した。
一瞬、会場が静まり返った。

『・・・出たぁぁぁぁぁ！！１０点、１０点！！最後の一投で１０点を叩きだしたリア選手、
合計４８点で何と、前大会の準優勝者とベスト４を退けて予選通過だぁぁぁぁ！！！』





そして、大歓声が巻き起こる。
集中力が切れたのか、リアは呆然とし、ハッとなった。

「やったね、リア！本選出場おめでとう！」

フィースが嬉しそうに駆け寄ってくる。

「はい、私、やりました！こんなに良い結果が出るなんて、フィースさんのおかげです！」

リアもやや興奮気味に喋っている。

「いや、僕はただアドバイスをしたにすぎないよ。
君の集中力の高さが、勝ちに繋がったんだ」

「あ、ありがとうございます。でもやはり、フィースさんがいてくれるから、
いつも以上の力が引き出せたんだと私は思います」

「ふふ、ありがとう。それじゃあ、次は本選だね。
予選とは比べ物にならないだろうけど、大丈夫かい？」

「はい。私はフィースさんを信じていますから。
だからフィースさんも、私を信じていてください。
それだけで私は、思いきり戦えますから・・・」

「ありがとう。それじゃあ、予選が終わるまで観客席に行こうか？」

「はい」


予選を通過した二人は、観客席でウェイン達と合流した。

「よう、来たか。・・・お、その子がリアって子か？」
「ああ。リア、彼らが僕の仲間だよ」

「初めまして、リアと申します」

「初めまして。
私はＥｔｅｒｎａｌ　Ｗｉｎｇｓのギルドマスターで、カーネルと言う者だ。
マスターとも呼ばれているが、呼び方はどちらでも構わない」
「私はエリスよ。そこのウェインの姉よ。よろしく、リア」
「私は、レミアって言うんだよ〜。よろしくね〜、リアちゃ〜ん」
「俺はウェインだ。まあ、よろしくな」

「はい。よろしくお願いします」

リアは握手を交わし、丁寧にお辞儀をした。
その後、ウェインから一つの提案が出た。

「なあ、この子をギルドに入れたらどうだ？
今入ってるのは、運営委員会が用意した大会出場のための仮ギルドみてえだしさ」

「え？」

リアは突然の事に驚いていた。

「それはいいな。きっと皆も喜ぶだろう。
しかし大会中は出場選手のギルド登録は、原則として禁止されているからな。
アーチャー部門が終わってからになってしまうが・・・」

カーネルは規則の事を気にしているが、前向きな姿勢をとっていた。

「で、でも、私なんかが入ってもよろしいのでしょうか・・・？」

「良いのよ、心配しなくても。みんな良い人達ばかりだから。
まあ、中には変な人もいるけど・・・」

エリスの後半の台詞は、本人以外には聞こえなかった。

「私としても無理に勧める事はしないが、どうする？」

「で、では、お言葉に甘えまして・・・」

「わ〜い、リアちゃんが入るんだ〜〜♪」

「では、皆にその旨を伝えるか。
明日の大会終了時、恒例の新人歓迎パーティーを開かねばな」

「あ、あの・・・よろしいのですか？」
「さっきエリスさんも言ってたけど、いい人達ばっかりだから心配しなくていいよ」

「は、はい」

「ああ、それとマスター」
「何だ？」

「『優勝おめでとう』も入れておいてくれないかな？」
「フィ、フィースさん！？」

フィースのいきなりの優勝宣言に、リアはただ驚くことしかできなかった。

「ははっ、こりゃ大きくでたな」
「わかった、そうしよう」
「歓迎パーティーに優勝おめでとうパーティー、か。
これは準備だけでも大変ね〜」
「ごちそう、ごちそう♪」

「まあ、これを励みにして頑張ろう、リア」
「・・・はい！」


やがて全ての予選が終わり、本選に出場する６４組が決まった。
注目されていたエリーヌ・ルースの組は、リアと同じ得点を叩き出し、
予選を通過していた。
そして、本選の組合せが決まった。

「あの二人は反対側のグループか・・・ベスト８以降で戦うチャンスが二回あるね。
確かベスト８は特設フィールドでのサバイバル戦だったはずだから」
「そうですね。でも私、頑張りますから！」
「うん、その意気だ！」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「これが皆との始まりだったのよ、フィリア」

微笑みながら、フィリアに話しかけるリア。

「そうだったんだー。みんな昔から変わってなかったんだね。
パパもママも、その時からお互いの事をとってもとっても信じていたんだよね？」

「そうよ？パパがいてくれたから、ママは安心できたの」
「パパもね、ママが信じてくれたから、ママをしっかりと支えれたんだ」

「そうなんだ〜・・・ねえ、パパ、ママ。早く続きが聞きた〜い！」

「そうだね。それじゃあ、続きを話そうか」




〜後編に続く〜


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