「アンダコラ〜！」

拠点に響くドアちゃんの声。
真っ正面でそれを聞いてしまった私の耳はキンキンと痛んできた。
借りていたクラニアルバックラー(+5)を返したとたんそんなドアちゃんの返事が飛んだ。

うぅ…　どうしたのさ…

ドアちゃんが、バックラーの隅を指さしながら怒鳴る。

「ほら、ココ！　傷が入ってるじゃないか、ボンクラ！」

指さされたところを見てみると…
うぁ…　カートをブロック塀で擦ったような傷が１０センチほど入っている。

「あ、あれれ。どうしてかな〜」

記憶を辿ってみる。
えーっと…

畳ダンジョンで銃骨倒してた時…ニューマで攻撃を防いでたから違うよね。
アマツダンジョンの２階…忍者に追っかけられてた時…あっ！！
そうだった、倒した銃骨が落としたでっかいゼロピーに足を取られて派手に転んで…
その後は忍者に…（お察しください）

回想終わり。

「そうだ、アマツＢ２で転んだときだ…多分」
「いつ傷が入ったかなんて聞いてないぞ〜！　弁償しろ〜！」
「え〜！」

あまりの声の大きさにびっくりして慌ててお財布を覗く。
えーっと、ひぃふぅみぃよぉ…
…４kゼニー。
クラニアルバックラー(+5)の相場が…３Ｍ？　いや、もっと？
…
……
………
ふらっ
頭がくらくらする。
しがないアコライトに出せるお金じゃない。

「と…とりあえず。修理して綺麗にして返しますからそれで許して下さい…」
涙目で訴える。

「わかった、じゃあできたら返しに来い、ボンクラ」
「あ、ありがとうございますー（涙」

そんなわけで私はもう一度クラニアルバックラー(+5)を受け取った。




〜借り物〜





さて、受け取ったクラニアルバックラー(+5)の傷を眺めてみる。

幅１０センチ程度。
深さ…１ミリくらいかな。

こ…これは強敵だ。

ちょっとやそっとで直せるような傷ではない。

作戦その１．紙ヤスリで削ってなめらかにする
　→　バックラーが薄くなった！ってドアちゃんが激怒するので却下
作戦その２．ハンマーで叩いて目立たなくする
　→　見た目が悪いし根本的解決にならないので却下
作戦その３．弁償
　→　そもそも無理

どうすればいいんだよぉ…
涙が出てきた。
このままだと私、ドアちゃんの…

想像中…

「アコ安いよ〜　３Ｍからお〜くしょんだよ〜」

想像終わり。

「そんなのいやぁぁぁぁぁ！」

ハァハァ…
絶対阻止だ、阻止。
とは言ってもこれといった修理方法があるわけでもない。
どうしよう…

途方に暮れた私は、ずしりと重く感じるバックラーを抱えてモロクの中央街へとぼとぼと歩いていった。

アマツで拾ったドロップ品を売ってできたお金が約６ｋゼニー。
お財布のお金と合わせても１０ｋゼニー。
…
悲しくなってきた。

と、あるＢＳさんの看板が目に入る。

『装備品の傷３５分で直します。９ｋゼニーから』

こっ、これだぁぁぁ！！

「すみませーん！！」
ＢＳさんに声をかける。

「このバックラーの傷を無くして欲しいんですけど…おいくらくらいかかりますか？」

ＢＳさんは受け取ったバックラーをしげしげと眺めると、
「これだったら４０分も待ってもらえれば綺麗に直すよ、お代は…そうだなぁ消費税込みで９４５０ゼニーだね」

「！」

キタ━━━━━━（゜∀゜）━━━━━━ッ!!

「おおおおお、お願いしますっ！」
「おう、じゃあ４０分後にまた来てくれな。お代もその時にもらうから」
「はーい、よろしくお願いします〜」


で、あっという間に４０分後。


「う…美しい…」
今度はうれし涙が出てきた。
ドアちゃんから初めに借りたときよりも綺麗だ。
傷は見事に消えてるし、別に薄く削ったという感じも全くない。
このＢＳさん、名工だ！！

お金を払い、バックラーを受け取った私はドアちゃんに返す前に一度倉庫にためてあった銃骨産の鉄６００個を持って先ほどのＢＳさんの露店を再び訪れた。

「本当に助かりましたっ、これせめてものお礼ですっ！！」
ドスンという音と共に鉄を差し出す。

「お…おう。ありがとう。ちょっと待ってな」
そう言うとＢＳさんは溶鉱炉と金敷を取り出して、
カンカン！
パンパカパーン！！
一本のナイフを作って私に放り投げた。

「名刺代わりだ、持って行きな」
「わぁ、ありがとうございます〜」

ナイフを受け取って私はドアちゃんの元に走った。


「…ナオッテル」
今度はドアちゃんがバックラーをしげしげと眺めていた。

「ちゃんと綺麗にして返しましたからねっ！」
私は誇らしげに胸を張る。

「しかし、綺麗に直ってるな。どうやって？」
「私じゃないよ、ＢＳさんにお願いしたの」
「ほほー。名工だ。なんてＢＳさん？」
「…名前聞くの忘れてた」
「ボンクラー」

…あ
そうだ、手作りのナイフがあったんだった。
ナイフには銘が入っているはず。
ごそごそ…
あった！

えーっと、なになに…

『キズナックス のナイフ』

「ドアちゃん！　キズナックスって人〜」
「ト○タかよっ」


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<<あとがき>>
えーと、とりあえずごめんなさいっ！
『二人のアコライト』の後書きを書きながら、
「そういえば、本文中に『絆』って使わなかったなー」と思って
今度はきちんと使おうと思って書きました、３０分で。
えぇ、勢いって凄いですね。
今回は完全にギャグ路線です。
前作がプチシリアスだったので。
だって、前回のあおあんの『お約束』があったからいいじゃん！！
普通に『絆』って入れても面白くないでしょ？
あと、車に興味がない人、ごめんなさい。
分からない人はググってください。

主演：私の支援プリ＠アコ時代
友情出演：ドアちゃん