俺とお前は、今もここにいる。
たとえ、今お前がこの世に存在していなくても、、
俺とお前は、今もここにいる。
心はここに。
絆はここに。
俺と共に。
心はここに。
絆はここに。
―いつまでもここに―
ルーンミッドガッツ王国王都プロンテラ。
今、プロンテラは、街と呼べるだろうか。
街を囲む壁は破られ、そこから次から次へと魔物が押し寄せてきた。
行く手を阻む壁の無い空からは、弓を構えた魔物が現れた。
街は魔物に襲撃されたのだ。
異変が続く中、魔物が街を襲撃する事は十分考えられた。
しかし、それは再び幕を開けた聖戦ではなかった。
聖戦は神々の黄昏。
聖戦は人々の黄昏。
聖戦は魔族の黄昏。
聖戦は世界の黄昏。
今、ここに神はいない。
人間と魔物。
その二種類だけだ。
逃げ惑う人々は逃げるか殺されるかで、魔物の大群に成す術はなかった。
ただ、救いを求め逃げる事しかできなかった。
「いいかよく聞け。これより俺達は、プロンテラに襲撃を始めた魔物の軍を一匹残らず蹴散らす事だ。
敵は上級レベルだ。気ぃ抜いてっと気付いたらあの世だぞ」
王立騎士団の全隊は王城に集まり、魔物の排除を遂行する事となった。
「最後に、お前らに訊くぜ」
騎士団副団長、ゼイファーは大きく息を吸い、そして怒鳴る様に叫んだ。
「街の平和のために、命を捨てる覚悟はあるかぁーっっ！！！！？」
「おぉぉーーーーっ！！！！！」
「総員、突撃ぃ！！！！」
騎士団全隊は、王城からプロンテラ城下町へと、二列を作って走り出した。
鈍く輝く鎧、兜を装備し、手には剣、盾を持ち、いざ戦場へと赴いた。
「ハル」
騎士達が戦場へと走り出す中、ゼイファーに呼び止められハルという男は、振り返った。
「俺も後からすぐ団長と城下町に向かう」
「ディレス副団長は団長と共に此処をお守りください。魔物の排除は我々だけで十分です」
「敬語なんてよしてくれって言ってんだろ、ハル。地位の差があっても俺達が幼馴染って事には変わりねぇ」
「・・・・そう、だな」
「それに、お前らが魔物を排除できなかったら、俺と団長だけで王を守れると思うか？」
「それは・・・・」
「だったら、俺も行って魔物共を蹴散らしてやろうじゃねぇの。城に入り込まれなければ王だって安全なんだしよ」
「・・・・そうだな。じゃ、行ってくる」
「最後まで、生き残れよ」
「あぁ・・・！」
王立騎士団副団長、ゼイファー・ディレス。
王立騎士団第三番隊隊長、ハルバス・フィリー。
二人は幼馴染だ。
王立騎士団に入団し、街、そして人々を守りたかった。
そんな夢を共に追い続け、そして掴んだ。
全てにおいて一歩秀でていたゼイファーは、見事副団長の地位を手に入れた。
幼馴染で、しかも同い年であるから、抜かされてしまったのは、ハルバスは少し悔しかった。
しかしそんな悔しい思いもすぐに消え、今は第三番隊隊長として、活躍している。
最後に二人は、鎧の下に隠された、首にぶら下げたロザリーを見せ合った。
そして、ハルバスは戦場へと走っていった。
それは絆の印。
それがある限り、二人の絆は消えない。
絆は即ち心であり、心は即ち絆。
二人の心は、いつも傍にあるという、証。
二人の絆は、決して消える事の無いという、証。
絆の印は、己を守ってくれる。
「さぁて、俺もさっさと行くかな」
戦火は水で消えはしない。
どちらかの勝利。それが戦火を消す。
積極的に魔物の殲滅にかかる騎士。
己を犠牲にし、仲間を守りながらも、騎士と同様に戦うクルセイダー。
その騎士とクルセイダーの援護や、空襲への対抗をする弓を構えた遠距離部隊。
激戦を繰り広げているうち、プロンテラ大聖堂の聖職者達が助けに入りながら、魔物と対抗した。
しかし、魔物も襲ってきた側。
そう簡単に終わる相手ではない。
素早い動きで敵を翻弄する、彷徨う者、インジャスティス。
後衛からのオークアーチャーの矢。
ガーゴイルの矢による空襲。
レイドリック、ミノタウロス、キメラ・・・・。
数え切れない種類の魔物達は、騎士団や大聖堂の聖職者、逃げ惑う人々を、無差別に、とにかく目の前にいる人間を殺していった。
ハルバスはブロードソードを手に、オークウォーリアーを真っ二つに切り裂いた。
第三番隊を率い、片っ端から魔物を切り刻んだ。
街の人々は、すでに王城へと非難している。
今地面に転がっている、殺されてしまった人々を除いて――。
後は魔物を殲滅するだけだ。
魔物の数は確かに多い。だが、こちらだって負けない程の数がある。
多大な犠牲が出る事は承知している。それでも、この襲撃を退ける事ができるだろう。
ゼイファーが城下町に出てきて、どれ程の時間が経っただろう。
団長の亡骸がそこにあった。
団長をあんな姿にしやがって！
ゼイファーは心の中で叫びながら、狂人の様に彷徨う者を斬り刻みまくった。
荒い息をしているセイファーは、急に辺りが暗くなった事に気付いた。
後ろに、何か大きなモノがいる。
ゼイファーは振り返った。
そこには、ライオンの様な顔、ゴリラの様な身体。そして、背中には数匹の蛇が、くねくねと動いていた。
合成獣――キメラ。
それが、ゼイファーの前に立ちはだかっていた。
ゼイファーの目はまるで、鬼の目。圧倒的な威圧感を漂わせ、目の前にいるのが人間であれば、そいつは腰を抜かしてたりでもしただろう。
しかし相手は、キメラだ。
ゼイファーはクレイモアを手に、キメラへと突進した。
気付けば、一人になっていた。
ハルバスはブロードソードを手に、ぼろぼろの街を歩いていた。
さっきまで、同じ三番隊の者達がいたというのに、今では、ハルバス一人になっていた。
「・・・・！」
ハルバスのいる前から、足音が聞こえた。
それは人が歩くときの足音ではなかった。
「・・・・あれは・・・！？」
氷の様な身体に、小さな盾。
そして、氷の槍を持った、鹿の様な魔物がいた。
その名も、ストームナイト。
もはや鬼どころではない。
まるで、バフォメットの様な男だった。
ゼイファーの立つ後ろには、キメラの無残な死体があった。
「・・・・もう魔物は・・・いないのか？」
ゼイファーは街の中を少し歩くと、突然、立ち止まった。
「どうしたってんだ・・・・？ なんだこの胸騒ぎは・・・」
そして、ゼイファーの頭に、ハルバスの顔が浮かんだ。
まずい、ハルがまずい！
根拠は無いが・・・・。
いや、ある。
俺とあいつの絆が、俺の根拠だ！
『絆』がハルバスの危険を感じているのだ。
ゼイファーはそう思った。
とにかく、ハルバスを見つけなくてはいけない。
ゼイファーは全力で走り出した。
（ハル・・・！！）
「てやぁぁ！！」
ハルバスのブロードソードが縦に振り下ろされた。
ストームナイトはそれを盾で受け止めると、ハルバスを弾き返した。
そしてすぐに、氷の槍をハルバスに向かって振り下ろした。
ハルバスはブロードソードでその槍を受け止めようとする。
だが。
突然、槍を振り下ろしているストームナイトの姿が、消えたのだ。
振り下ろしている状態から攻撃を止め、目にも止まらぬ動きで何処かに移動したのだろうか。
否。
解った時にはもう遅かった。
氷の槍が、紅く染まった。
一瞬、何がどうなったのか解らなかった。
だが、すぐにハルバスは理解した。
槍が、自分の胸を貫いていた。
ストームナイトはハルバスの背後から、槍を突き刺したのだ。
幻覚。
そう呼ばれる、ストームナイトの技がある。
ストームナイトが突然目の前から消えたのも、背後にいたのも、全て理解した。
ズボッという音とともに、氷の槍が引き抜かれた。
ハルバスはブロードソードを落とし、ゆっくりと倒れていった。
「ごめんよ、ゼイファー」
ゼイファーは衝撃を隠せなかった。
そこに立っていたのは、ストームナイト。
そこに倒れていたのは、幼馴染のハルバス。
全てを理解した。
こいつが、この鹿の魔物が、ストームナイトが、ハルバスをあんな姿にしたのだ。
悲しみと怒りが込み上げてきた。
もうこんな戦い、耐えられない。
「うぉぉぉぉぉぉぉ！！！！」
ゼイファーは、涙をこぼしながら叫び、ストームナイトに突撃した。
その力はストームナイトの氷の槍を砕き、
その力はストームナイトの命を奪った。
もうハルバスは帰ってこない。
解っていながらも、もはや死んでいるストームナイトを、斬り続けた。
「はあ・・・はあ・・・・・・」
ハルは荒い息遣いで、ぐちゃぐちゃになったストームナイトを見た。
返り血を浴びたゼイファーの目からは、まだ涙が流れていた。
今はもう形だけの、ハルバス。
そのハルバスの前で膝をつく。
「ハルーーーーッッ！！！！！！」
曇った空からは、大雨が振り出した。
それから２年の時が経った。
今、プロンテラは街として復活し、活気を取り戻していた。
そして、プロンテラの墓場には、街を守った、被害にあった人々の墓が立てられていた。
そして、勇敢なる騎士達の墓が、立てられていた。
『ハルバス・フィリー ここに眠る』
ハルバスの墓の前には、ハルバスの絆の証、ロザリーが置かれていた。
その墓石の前には、私服を着たゼイファーの姿があった。
ゼイファーは買ってきた花束と、絆の証、ロザリーを、ハルバスのロザリーの傍に置いた。
俺とお前は、今もここにいる。
たとえ、今お前がこの世に存在していなくても、、
俺とお前は、今もここにいる。
心はここに。
絆はここに。
俺と共に。
心はここに。
絆はここに。
―あとがき―
二回目投稿です。ごめんなさい。
今回お題が絆という事で、悩ませていただきました。
得に何もありませんけど、補足みたいなのとして二つ。
『遠距離部隊』とありましたが、あれは各隊の弓を使う騎士（あったらいいなと思う職）たちを集めて、
臨時に結成した部隊の事だと思います笑い。
あとストームナイトの氷の槍。嵐騎士をゲーム中見たことがないので、どんな武器なんだろうと思いました。
ドロップにゼピュロスがあるし、ゼピュロスって確か槍だった気がするな。
って事で槍にしました。
なんか文章が滅茶苦茶な気がしちゃってます(笑)。
もう心残りはありません（二度目ヵョ）。